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不老不死の暴君
第二十話 幻・落日の王国
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だがそうはならなかった。結婚式から僅か1週間後。
アルケイディア帝国がラスラの故郷ナブラディア王国に侵攻したのだ。
ナブラディア王国は数日で滅び同盟関係にあったダルマスカにも帝国は侵攻を開始した。
そしてラスラは自ら父にナルビナ行きを志願した。
出陣の際アーシェはラスラに言った。
生きて帰ってきてくださいと。
ラスラは頷き僅かな兵を率いて北の国境のナルビナへと赴いた。
そして・・・ラスラは死体になって帰ってきた。
あの時ほど泣いた事はいままでなかっただろう。
しかしまだ悲劇はそれで終わりではなかった。
アルケイディアはラバナスタを目前にして進軍を停止し和平交渉を打診してきた。
父のラミナスはそれを受け占領下のナルビナへと向かった。
アーシェはまだラスラの死から立ち直れてはいなかったがこれで戦争が終わるのだと信じていた。
だが数日後ウォースラが真っ青な表情でアーシェに告げた。
陛下がナルビナで暗殺されたと。
夫に続き父まで失った悲しみでアーシェは気を失った。
次に目が覚めるとウォースラと共にダルマスカの辺境の町にいた。
そして・・・その気を失ってる間にダルマスカはアルケイディアに降伏していた。
ビュエルバのオンドール候が中立の立場から降伏を促し、アルケイディアが進軍を再開する前に無条件降伏をしたらしい。
アーシェはオンドール候に感謝した。降伏とはいえラバナスタを戦火から守ってくれたのだから。
しかしウォースラの次の報告でその思いは無くなってしまった。
侯爵が自分の自殺を発表したという事を聞いて。
要するに侯爵は帝国側に回ってしまったのだ。
そしてウォースラもまた何を信じればいいのかわからなくなっていた。
互いに信じあっていたバッシュが陛下を暗殺し、頼りの侯爵も帝国の傘下に下ってしまった。
その結果・・・ラバナスタの解放軍は孤立化していった。
アーシェもウォースラも信じきれる人物が全くいなくなっていたからだ。
そのようなことを思い返しているとラスラの幻がアーシェの横を通る。
アーシェは引きとめようと手を伸ばしたがラスラの幻はアーシェの手をすり抜け何事も無かったのように歩き続ける。
それを目で追いながらアーシェは呟く。

「仇は必ず・・・」

ラスラの幻はアーシェに振り返ることなく部屋の出口へ歩いていった。
するとヴァンもラスラの幻を目で追っているように見えた。
気のせいかと思うと自分の左手になにか違和感を感じ左手を目の前に持っていく。
すると左手は輝く【暁の断片】を握り締めていた。
そして左手につけている結婚指輪を見て死んだラスラの事を思った。
その様子をバルフレアはなにか言いたげ顔で眺めていた。
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