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七色の変化球
3部分:第三章
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遅い、だからまた手を出しそうになった。しかしそれこそが若林の罠だと見てだ。青田はそのシュートも打たなかった。
「まだストライクは一球ある」
 それでだ。ここは見送ったのだった。それでだ。
 彼は四球目も手を出さなかった。ツーストライクツーボールになった。
「あと一球か」
 もうストライクの見送りは許されない。それを覚悟した。
 覚悟してだ。彼はあることを考えた。
「難しいけれどあれしかないな」
 その考えはというとだった。
「カットしていくか」
 ボールを打ってわざとファールにしようと決めたのだ。ストレートでないストライクが来たならばだ。そうすると決めたのである。
 ただしこれには相当のバットコントロールが必要だ。青田といえどもそうそう簡単にはできない。しかしそれでも今はなのだった。
「ストレートを確実に打つ」
 こう決めてのことだった。
「それなら。今は」
 それしかないからだ。それでだった。

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