第三章
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第三章
土門はそれは打った。しかし三塁側へのファールだった。
コントロールは巧みだった。内角の隅に入る。これでは打つのは難しい。
それからも二球程ストレートが来た。一球はストライクで一球はボールだった。カウントはツーストライクワンボールだ。
そうなってからだ。池端は。
そのボールを投げた。それにはだった。
土門は思わず体勢を崩してだった。
かろうじてバットに当てたがそれまでだった。あえなくだ。
転々と転がったボールを池端に取られてしまった。つまりは。
「ピッチャーゴロだな」
「はい」
「俺の勝ちだな」
少し勝ち誇った顔になってだ。池端は言った。
「こういうことだよ」
「まさか。こうなるとは」
「思わなかったな」
「信じられないです」
「だがこれが事実だ」
今度は引き締まった顔になって話す池端だった。
そのうえでだ。土門に対してまた言った。
「わかったな。それならな」
「はい」
「御前にこのボールを授けるからな」
「そうしてですね」
「今まで以上に勝て」
そうしろというのだ。
「いいな。三振も防御率もな」
「これまで以上にですね」
「そうなれ」
こう話してだった。そのうえでだ。
土門は池端にそのボールを教えられたのだ。そうしてペナントに挑んだ。
最初の先発の試合は開幕戦だった。彼は何とか開幕投手に選ばれたのだ。
七回までは好投で一失点に抑えた。チームは三点取っていた。
三対一、試合は有利に進んでいた。しかし八回にだ。
彼は打ち込まれ二塁と三塁にランナーがいた。ツーアウト二塁三塁だ。一打出れば同点、ホームランが出れば逆転だった。
その状況でバッターは相手チームの主砲だった。まさに正念場だった。
その彼を見てだ。土門はだ。
まずは速球を投げた。それは微かにボールになった。
相手もそれは見送る。ボールは二球続いた。
そして次はだ。ギリギリストライクになる高速シュート、これは見送られた。
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