第二章
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第二章
それでだ。次の監督についてもあれこれ言うのだった。
「とにかく大物が欲しいんだ」
「鶴岡さんがいいか?」
「わしのチームには大監督が相応しい」
「だから南海さんとも話してみる」
こんなことをぶちまけていた。永田は永田ラッパとも言われる程とにかくよく喋り言う男だった。だから今回もそうしていたのだ。
しかしそんな彼に対してだ。選手達はだ。
やはり何も言わない。西本を批判しなかった。
西本はだ。選手達にこう言われていたのだった。
「あの人で優勝できたのにな」
「来年は優勝できないだろうな」
「いや。これからも優勝は無理だろうな」
「うちはあの人じゃないとな」
これが彼等の見ているところだった。そして実際にだ。
彼の率いた大毎は優勝から遠ざかった。また南海や西鉄の時代になった。しかしだ。
今度は阪急だった。西本が監督になった阪急がだ。
次第に強くなり昭和四十二年に遂にだった。
優勝した。阪急にとってはじめての優勝だ。それを見てだ。
誰もが目を剥いた。そして言うのだった。
「あの阪急が優勝!?」
「ずっと弱かったあのチームがか」
「灰色ブレーブスがか」
「優勝したんだな」
阪急は弱小球団だった。西本が率いていても何年も低迷していた。しかしその阪急がだ。見事優勝したのだ。その西本によってだ。
だからこそ誰もが驚いた。そして選手達は言うのだった。
「わし等なんか西本さんが監督に来てくれへんかったら駄目でしたよ」
「絶対に優勝できませんでした」
「けれど西本さんがキャッチボールやランニングから教えてくれて」
「それで優勝できました」
基礎から育てたというのだ。選手達をだ。
そしてそれによって真の実力を身に着けた選手達により勝った。それでだ。
彼等は西本に心から感謝し彼を深く敬愛する様になった。しかしだった。
西本はここでもだ。こう言ったのである。
「選手達はやってくれたんです」
「おい、君がいてこそじゃないか」
阪急の小林オーナーはその西本と涙ながらに握手しながら言い返した。
「君が監督に来てくれて」
「いえ、選手達が頑張ってくれました」
その厳しい顔でだ。西本は小林にも言うのだ。
「それでできたんです」
「そうか。そう言うのか」
「それにペナントでは優勝しました」
それで終わりではないというのだ。
「後はシリーズです」
「そうだな。シリーズだな」
「巨人です」
相手は巨人だった。既に決まっていた。
「戦ってきます」
「うん、頑張ってくれよ」
こうやり取りをしてシリーズに赴く。西本にとっては二度目のだ。
しかしこの年のシリーズは王、長嶋を擁する巨人に敗れた。
そしてその次の年もその次もだ。巨人に敗れ続けた。
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