暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
妖精のロンド
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乱暴に叩く手が一つ。

「んだよぉ蓮!木綿季!勿体つけやがって!主役サマは遅れて登場ってかァ?」

背中の痛みを我慢しながら振り向くと、そこには褐色の肌を持つ女性がいた。

SAO事件からまだ三ヶ月弱ほどしか経っていないのに、その身体には現役にいた時と遜色ない筋肉が戻りつつある。

───卿といいコノ人といい、何で僕の周りにはこういうのしか集まらないんだ。

そんな愚痴を胸中で吐き出しつつ、蓮はため息交じりに口を開いた。

「テオドラねーちゃん。もう酔ってんの?」

「なっはっは。にゃに言ってんだよぉ〜。酔ってるわきゃねぇだろぉ〜がよぉ〜」

「今のねーちゃんを見て、酔ってないってゆー人は少ないと思うよー」

のほほんとした声と同時、テオドラは笑いながらジョッキを煽る。

朱に染まる頬を見ていると、どう考えても酔っている。

「そーいやねーちゃんもアメリカに帰ったんじゃなかったの?海軍復帰するぞーとか言ってたのに」

「それがよぉ、レン。復帰自体はしたんだけどさぁ、二年も現場を離れてた奴がいまさら戻って来んなーとか言われてよー。沖縄に飛ばされたんじゃよ〜」

うわこの人酒癖悪い。

「それじゃあALOにもログインできるね」

「おうっ。毎日でもインするぜ〜」

一方的にそんな宣言をし、へらへらとバカ笑いしながらテオドラは人の中に消えた。

ふと後ろを見ると、車椅子を押してくれるはずの木綿季はすでにどこかへ連れ去られていた。いつの間に。

見回すと、遥か遠くで人ゴミの中から伸ばされる華奢な手が辛うじて見ることができた。

蓮〜〜、たぁ〜すぅ〜けぇ〜てぇ〜、などという声が聞こえたが心の中で合掌。

仕方なく自力で車輪を掴み、グッと押す。

さすがに最新式の運動理論を組み込んだ車椅子だ。まだ力が戻っていない蓮の手でも、車輪は滑らかに動き出してくれた。

どうにかこうにかカウンターに辿り着くと、グラスを磨いていたイヨが声を掛けてくる。

「ふふふ、大人気ね。《英雄》クン?」

「勘弁してよ……」

「何か入れるわよー。何がいい?」

「………………何があるの?」

頬杖をついて適当に言うと、イヨはメニューを滑らせて寄越した。

「……ヴォッカ」

試しにそう言うと、驚いたことに琥珀色の液体が入ったグラスが滑り出てくる。恐る恐る飲んでみると、何のことではない。ただの烏龍茶だ。

店主を横目でねめつけると

「お子様にヴォッカは十年早いわ」

と返された。

ド正論だった。

口をひん曲げていると、隣のスツールに座るしなやかな女性の姿があった。

長い黒髪を後頭部で縛り、顔は日本人離れした美貌。着ているのは薄い藍色のカーディガンに紺
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