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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十四話『雲を裂いて』
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第一アリーナ、館内。

Bモニタールーム近くで、茶色い髪をまとめた眼鏡の生徒が息をひそめていた。
「ふふっ、試合内容は後輩に録画してもらいつつ、私の本命はこっちよ……!」
懲りない女、(まゆずみ)薫子(かおるこ)である。
――学園内に見たことのない美女が来訪している。
和服を改造したコスプレのような衣装をまとったウソのような銀髪の美女だという。しかも彼女は、複数人の証言から“期待の男子生徒”の何かしらの芸の師匠だとも、親だとも、はたまた年上の恋人だとも噂されているのだ。
四月の“霍乱《かくらん》”以来、息をひそめていた黛だったが、先日の謎の試合乱入事件以来、その人物がこの学園に滞在していると聞いて、いてもたってもいられず復活の狼煙を上げんと画策したのだった。
「さっき掴んだ情報によれば、目標はBモニタールーム側に向かっていったと聞いたわ……」
妖しさ満点で独語しつつ、美女が化粧直しなどで席を立つ瞬間を待っていた。
最悪、退室の瞬間を狙ってでもその顔と姿、そして彼女の大まかの素性を得たい。
「前回はどこのハッカーは知らないけど、スクープをオシャカにされちゃったわ。でも今回は突撃取材、むしろこれこそ私の十八番、最速で生地に仕立ててみせるわよ!」
壁に向かって独語しつつ、ドヤ顔を突きつける黛薫子。
相変わらず賑やかな少女である。
そんなことをしているうちに、Bモニタールームのドアが開閉する音が聞こえた。
再び息をひそめて廊下の影に隠れると、そこには和服とも大陸系のものともとれる奇抜な衣装をまとった美女が歩いていた。
(あれが噂の……!)
顔はよく見えないが、その佇まいから普通の女性とは一線を隠す雰囲気が醸されている。
それはモニター越しに世間を魅了する、美人実力派女優のそれに近い気分を持っていた。
お団子髪(シニヨン)から垂れる三筋のお下げ髪が、生き物の尾のように妖しげに揺れる。
行く先はどうやら化粧室のようだ。
(千載一遇のチャンス!!)
慣れた様子で物音一つ立てず、すばやく目標を追尾する。
美女が化粧室のある廊下の角へと曲がるのを確認し、自分もそっと角を覗き込んだ。
「え……?」
ところが角を曲がってあと数メートルはある地点で、美女は忽然と姿を消した。
走ったような音は無かった。ましてトイレから先は袋小路で、抜け出せる場所がない。
「なんで…、どこに行ったのよ……!?」
思わず狼狽する黛。


「わしゃ、こっちじゃよ」


その背後から、さっきまで負っていたはずの人物が唐突に出現した。
「ぅわあぁぁぁぁあっ!?」
あまりに不覚な出来事に、黛は思わず声を上げて驚く。
振り返ればそこには、噂に違わぬ――いや噂以上の美貌を持つ麗人が微笑みながら佇んていた。
抜群のスタイル、奇抜な衣装
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