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とある蛇の世界録
第三話
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 曹操との邂逅の後、そのまま何食わぬ顔で部室へと向かう朧。罪悪感などは感じていない。そもそも朧は『蛇』なのだから。唯一の心残りはアーシアの事だが、そのあたりは自分が護れば良いだろう。
 旧校舎へと向かい、部室のドアを開ける。そこにはいつものオカルト研究部の面々と、二人の修道服を着た女がいた。
「朧……」
「どうかしたか? 聖剣使いが来ているという事は、教会からの厄介事か?」
 朧の問いかけに頷くリアス。それに溜息をついてしまう。さきほどの曹操との話で、少しだけだが疲れているのだ、精神的に。それを見て、ムッと顔をゆがめるシスター二人。だが、朧は気にしない。
「ふむ、悪魔にそういわれるのはしゃくだが、そういわれても仕方がないな」
 そう言い、仕切り直しをはかる。
「その聖剣も、今になってはこんな姿さ」
 そう言って袋から取り出したのは、一本の神々しい剣だった。
「聖剣エクスカリバーは、先の大戦のときに折れてしまったんだが、それを錬金術で作り直したものがこれだ。この他もあわせて、全部で七つある」
「それが、エクスカリバー……」
「そうだ、アーサー王が泉の女神から受け取ったものだ」
 これが聖剣。一瞬でも気をとられれば浄化されてしまいそうな神々しさを持つ剣。さすがは伝説になるほどだ……と、リアスたちは思い、内心冷や汗をかいていた。そんななか朧がふっ、と鼻で笑うように、いや実際に嘲るように笑った。全員の目線が、朧に刺さる。それに気付いたか、笑みを深める。
「いや何。聖剣使いがどんなものかと思えば、下っ端だったとはな、と思っただけだよ」
 気にせずに進めろ、という朧だったが、それは無理だろう。
「ほう、それはつまりこの聖剣が弱いと、そういうのか?」
 朧はニヤニヤしたままだ。ここまで朧が表情を表に出すことは珍しい。実際は、精神的疲労によるストレスの発散が目的だったが、それでも面白そうかもしれない、と朧は笑う。
「そもそもの話だ……」 
 大げさにかぶりを振る、全員を見回し笑う。そして笑う。


「今現在、教会が保持している聖剣エクスカリバーは、私が創ったものだからな」


 ………………――――――――

「お、朧……何言ってるのよ……」
「事実だ。それはアーサー王の持っていたエクスカリバーを私が不十分ながらも解析し、錬金したものだ。――つまり、それは『にせもの』ということだよ」
「きっ、貴様ッ! 何を言うッ……ッ!」
 怒りに、朧へと掴みかかる勢いで立ち上がったゼノヴィアだったが、その朧の目を見て硬直する。それはまるで哀れむように、死に急ぐ獲物を見つめる蛇の如く。息を詰まらせるゼノヴィアに、何を思うこともなく立ち上がる朧。
「良いことを教えてやろう……」
 その蛇の目が、『エサ』を捕らえる。
「本物
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