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季節の変わり目
抉られる2〜決意〜

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 「進藤君が、記憶喪失・・・?」

佐為の親友の筒井公宏はまさか、と凍りついた。記憶喪失なんて、そんなことが自分の周りで起こるなど、予想もしていなかった。そんなことはドラマなどでしか見たことがなかった。佐為は魂が抜け落ちたような顔で、かなり消耗しているのが分かる。一旦口に持っていったバニララテを一口も飲まずにテーブルに戻した。

「先生も驚いてて・・・。頭を打った衝撃から来たものかもしれないし、精神的ショックから来たのかもしれないって。すぐ治るかどうかも分からないんです」

精神的ショック?筒井はぴんとこなかったが、とりあえず何故そうなったのか聞くことにした。

「頭を打ったって、どうして?」

佐為は質問にしばらく答えるのをためらった。筒井は疑問を感じた。佐為がまるで怒られるのを怖れて嘘をつく子供のように見えたからだ。

「私とヒカル、ネットカフェにいたんですけれど、ヒカルが突然よろめいて、そのまま倒れたんです」

「それで、記憶喪失?」

「はい」

一方佐為は尋問をされている気分だった。今回ヒカルに起こったことは、幾分か自分に非があると思ってしまうのだ。私は自分が何をしてしまったのか、理解できないけれど、私が言った言葉でヒカルをあんな状態にさせてしまった。何故、ヒカルが私のことだけ憶えていないのか。昨日のヒカルを見て、一瞬、もう二度と分かり合えない気がした。

「いつ治るかも分からないって・・・ずっとそのままってこともありえるってこと?」

「いえ、そんなことはないと」

沈黙が続いた。しかし佐為には自信があった。ヒカルがこのままなんていうことは絶対にないと。そして、私は決心していた。私が、ヒカルの記憶を戻してみせる。少し怖いけれど、私は恐れずに立ち向かっていくことに決めた。

「大丈夫です。ヒカルは」

佐為は確かめるようにそう呟いた。

「・・・佐為、進藤君と何かあった?」

図星をつかれた佐為。カップを取ろうとしていた手が揺れた。筒井はこの反応を肯定だと受け取った。

「鋭いですね。公宏は」

佐為は正直に自分の心情を吐露した。微笑んで答える佐為に筒井は少し緊張が和らいだ。

「何があったかは言えません。でも、私のせいでヒカルはとっても傷ついてしまいました。頭を打ったことと重なって、ヒカルが記憶を無くしたんだと思います」

「佐為、ただのケンカだろ?そんなに言い争ったの?」

力なく笑ってテーブルを見つめる佐為に筒井はこれ以上聞くのをやめた。これ以上探りをいれてはいけない何かがあると察したのだ。佐為はネットカフェでの出来事を思い出して首を振ってテーブルに項垂れた。

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