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逆リバウンド
第二章
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「わしはデブになるわ」
「頑張りや」
 清は泰のその背中を言葉で押した、そうしてだった。
 泰は妻の協力も得て太る為の努力をはじめた、夕食は彼だけが遅くなりしかも料理も脂っこいものがメインになった。
 それに酒も多く飲む、しかも。
 三時のおやつの量も増やし十時にも食べる様にした。それに飲みものも。
 紅茶やコーヒーにだ、これまでとは違う。
「お砂糖にクリープかいな」
「そや、もうブラックは飲まへん」
 泰は清と共にいつも通り社内の喫茶店で飲んでいた、そこでコーヒーにクリープと砂糖を飲みつつ言うのだった。
「こうして砂糖とクリープ入れてや」
「糖分とカロリーを多くしてか」
「飲むんや。飲みものも大事やさかいな」
「飲むお酒も替えたな」
 清は泰にこうも言った。
「わしと一緒に飲む時も」
「そや、これまでは普通の焼酎やビールやったが」
「チューハイにしてるな」
「レモンハイとかカルピスハイにな」
 そうした甘い、ジュースの様な酒にしているのだ。
「替えたわ」
「それで余計に太る様にしてるんやな」
「そや、その介あってや」 
 泰はここで自分のスーツの下の腹をその右手で掴んで言った。
「ちょっとやけどな」
「肉がついてきたんやな」
「これまでなかったんや」 
 贅肉、脂肪と言っていいそれがだというのだ。
「それがやっとや」
「おお、太ってきたんやな」
「人間やっぱり努力や」
 太ることについてもだというのだ。
「努力せなあかん」
「努力せな前に進まれへんしな」
「そういうこっちゃ。もっと太るで」
「ほな今日は晩何を食べるねん」
「すき焼きや」
 それだというのだ。
「白いのが一杯ある肉をわんさと食うわ」
「やるやん」
「やるで、酒は甘い日本酒をぐいぐいやってや」
 夜遅くにそうしてだというのだ。
「やっぱり太るわ」
「糖尿には気をつけるんやで」 
 清は泰に病気のことは注意した。
「太るのはええけどな」
「そやな、糖尿になったらあかんさかいな」
「そこは気をつけるんや、ええな」
「わかってるわ、それは」
 泰はこのことは真面目な顔で答えた、そのうえで甘くしたライトブラウンになったコーヒーを飲むのだった。
 泰は努力を続けた、するとその介があって。
 腹に肉がつきそれは顔にもだった、泰は見事太ることが出来た。
 そのうえでだ、清と仕事が終わった後の居酒屋でこってりとした串カツの山を前にしてカルピスハイで祝杯をあげつつ言った。
「どや、今のわしは」
「よお太ったな」
「ここまでなるのにほんま苦労したわ」
 その太った顔での言葉だ、誓う前の二倍はある。
「思ったより太らんでな」
「ほんま太りにくい体質やさかいな」
「一瞬たりとも気が抜けへんかったわ」

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