第一章
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第一章
行って参ります
大阪球場でだ。誰もが悲しみを感じていた。
南海ホークスの身売りが決定した。いきなり発表された形だがある程度予測をしている者はいた。だがそれでもだった。誰もがそれを惜しんでいた。
「南海は大阪やったのにな」
「九州に行くんか」
「ダイエーになったら九州やねんな」
「大阪の球団やなくなるんや」
「寂しい話や」
南海を、野球を愛する者達にとってはまさに痛恨の出来事だった。長い歴史を誇り多くの名選手を輩出しあの巨人を見事完膚なきまで粉砕し見事日本一を勝ち取った南海が大阪を去ってしまう。このことを残念に思わない者はいなかった。ホークスはホークスでももう大阪のホークス、南海ホークスではなくなる、このことが残念で仕方がなかったのだ。
「けどや」
ここで一塁ベンチを見る。そこには眼鏡をかけた気品のある、野球選手にはあまり見えない外見の紳士がだ。南海の緑と白のユニフォームを着て微笑んでいる。
その彼を見てだ。誰もが言うのだった。
「あの人が南海としての最後の監督でよかったな」
「そやな、杉浦さんでな」
「ほんまによかったわ」
かつて南海を日本一に導いた絶対のエース、その杉浦忠である。その彼が南海としての最後の時にだ。監督であるということがだというのだ。
幸せだと。彼等は話すのだった。
そしてだ。そのうえでだった。
彼等は試合を見守る。南海としての最後の試合は南海の勝利に終わった。終わりよければ全てよし、そうした形での幕引きになった。
だがそれで終わりではなくだ。南海の選手達はグラウンドに出てだ。旗を持ってそのうえでパレードをした。大阪のファン達へのお別れのパレードだった。
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