暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/InterlaceStory −剣製の魔術師−
プロローグ~異世界へ~
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想は彼女を守るための正義の味方へと形を変えた。

「――ああ、これじゃあ志貴さんの事を笑えないな」

 苦笑まじった呟きが漏れる。
 それはまだ理想が変わってない頃のこと、士郎は人類全ての脅威となりうる真祖の姫を排除しようとした時があった。
 無論星の抑止力と言える程の彼女を相手に勝てる勝算など皆無に等しかったが、それは彼女が真に力を取り戻した場合での話。
 その当時では士郎でも勝算があるほどに彼女は弱かった。
 ――そんなときだ。
 彼女だけの騎士とも言える殺人貴――遠野志貴が士郎の前に立ちはだかったのは。

 始めのうちは士郎は志貴のことはどうしても好きになれず、出会う度に殺し合っていた。
 当然だろう。
 志貴の抱く真祖だけの正義の味方とは、彼女が魔王に堕ち、人類を滅ぼす要因であったとしても最後まで守り抜くこと。それは全てを救う正義の味方を貫いてきた士郎とは真逆の理だったからだ。

 だがそれも長くは続かなかった。衛宮士郎にとっての最愛の人が出来てからというもの、二人の絆が確実なものになってきたからだ。
 ――世界の見方が変われば、その価値観も変わるとはよく言ったものだ……。
 そんなことを思いながら瞳を閉じる。
 もう視界が霞み、焦点が合わなくなってきたからだ。

 瞼の裏に浮かぶはこれまでの生涯の数々。
 
 遠坂の倫敦への誘いを蹴って、フリーランスの魔術師として世界へ渡ってから、気が遠くなる程長く旅してきた。
 その中で大切な出会いがあり、そして悲しい別れもあった。
 誰にも感謝されなくとも人々を救い、その報酬が罵倒であったとしても前に進み続ける。
 このような悲惨な終わりかたが来ることは、あの弓兵に会ったときから分かっていたことだからだ。
 流れる血液が凍り始めていることを感じると同時に、倒れた身体から感覚が失われていく。

「――全く。なんとも情けない様だ」

 ふと……ここにいる筈のない、それでいて聞き慣れた声に朧気になっていく意識を引き留める。
 それが誰かなんて考えるまでもない。
 例え二百年近く聞いていなくとも、これほどの威圧感を含む声を忘れる筈がないからだ――。
 フリーランスとして駆け回っている中、唐突に現れ自分を弟子にとった傲慢な、それでいて憎めない師父――キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ。そう、遠坂の家系において大師父に当たる本人そのもの。


「死徒になって三百年余り。――世界を敵に回しながらということを考えると及第点ではある。よくもったとは言っておこう。そうであろう?姫君よ――」
「――ええ、そうね。士郎、貴方はよく戦ったわ。もうこれ以上その身を傷つけなくていい」

 ああ、この声はよく知っている。
 ――それは衛宮士郎が生きている証の
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