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One more glass of Red wine
第二章

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第二章

「最後に」
「これが最後のワインね」
「ああ。俺が入れるな」
 残念そうな微笑みだった。自分が悪いのにそんな笑みになるのは勝手だとわかっていたが。それでもその笑みになってしまった。
「それでいいよな」
「御願いするわ」
 女も寂しい笑みで応えてみせた。
「最後にね」
「それが飲み終わる頃にはチークも終わるさ」
 彼は言う。
「何もかも」
「不思議ね」
 女も言う。寂しげな笑みのままで。
「あんなに熱かったのに。急に冷たくなって」
「何もかもな」
「ねえ」
 女はまた声をかけた。
「今はこうなってしまったけれど。次に生まれ変わって一緒になったら」
「その時はまたな」
 もうボトルの中のワインはなくなってしまった。彼女に注いだので全ては終わりだった。
「こんなことにだけはならないようにしような」
「今更言っても無駄だけれど」
「仕方ないさ」
 全てはそれだけだった。何もかもが。
「俺達が馬鹿だったから」
「馬鹿だからそうなって」
 寂しい笑みが消えて。悲しい笑みになっていた。
「何もかもが駄目になって」
「それもこれも全部終わって」
 二人はそう言葉を紡ぎ合わせて。それも最後なのがわかっていたが。
「それじゃあな」
「ええ」
 もうすぐチークが終わろうとしていた。女はそれを見ながらグラスの中のワインを飲んだ。それを飲み干した時にチークは終わった。
 店の中で拍手が聴こえてくる。しかし薔薇が飾られた席にはいるのは薔薇だけになっていた。他には誰もいなくなっていた。
 チークの後は変な不協和音めいたノイズの様な音楽が奏でられだした。その不協和音がはじまるのを聴くのも薔薇達だけだった。恋の終わりを見届けた薔薇達はワインの残り香の中で静かにそこに咲いていた。何事も終わった舞台の中央で。


One more glass of Red wine   完


                2007・10・12

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