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ロンリー=ソルジャー
ロンリー=ソルジャー
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[9] 最初
本に帰るぞ」
「了解」
 それに従い飛行機の後ろが閉められた。僕達はシートベルトを締める。自衛隊の飛行機はとりわけ揺れる。だから用心の為だ。さもないと飛行機の中で皆転がってしまう。
 飛行機が走りはじめた。そして離陸する。その感触が僕達にも伝わる。
「これで買えるな」
 僕は飛び立った飛行機の中でそう思った。実は僕は今度のPKOでできたお金で買いたいものがあったのだ。
 サイドカー。僕が運転して彼女が横に乗る。そして道をドライブするのが前からの夢だったのだ。
「何だ、やっぱり嬉しいのかよ」
 ここで僕の横にいた同僚の一人が声をかけてきた。
「日本に帰れるのが。彼女と会えるからか?」
「ああ」
 僕はこの時多分にやけていたのだろう。だがそれに構わず頷いた。
「これでね。買えるから」
「!?買える」
「ああ」
 僕はまた頷いた。
「これで買えるんだよ、あれが」
「あれがって何だよ」
「家か、車か」
「まあ車だな」
 僕は笑ったままこう言った。
「それでドライブでもするか」
「いいねえ、お金がある奴は」
「俺なんかここの金全部ガキの養育費だぜ。所帯持ちは辛いよ」
「御前はまた早く結婚し過ぎたんだよ」
「ケッ、そう言う御前は相手もいねえだろうが」
「俺は花の独身貴族なんだよ」
「隊舎住まいで何が貴族だよ、おい」
 隣でそんな話をしていた。だが僕はその話はあまり耳には入っていなかった。
「日本に帰ったらまず」
 バイク屋に行くつもりだった。そしてサイドカーを買う。
 それから彼女の待つアパートに帰る。それからデートだ。
「今から待ち遠しいな」
 僕はこの時ウキウキしていた。この為にここに来た。そして帰る。思えば嬉しくない筈がない。
 ふと背中にある壁の方を見た。あの時の子供達のことも思い出したからだ。
「さようなら」
 これは心の中で呟いた。彼等のことも忘れはしない。辛かったけれど今ではもういい思い出になりつつある。
 その思い出を胸に僕は彼女のところに帰る。隣に彼女が座るべき場所を持って来て。何かそう思うと一人じゃないと気付いた。それが無性に嬉しかった。


ロンリー=ソルジャー   完


         2005・11・7
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