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乱世の確率事象改変
諸刃の信頼
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 公孫賛と袁紹の争いは現在、膠着していた。
 不意打ちによる宣戦布告から始まり、第一、第二の関を落とし、勢いに乗っていた袁紹軍ではあったが、さすがに幽州を異民族の侵略から守り抜いてきた公孫賛の本隊を容易に蹂躙することなど出来ず、一度目の野戦では相応の被害を受けた。
 それを機に二度、三度目の野戦で公孫賛軍は逆に勢いをつけて士気高く、袁紹軍を領内の端にまで後退させる事に成功した。
 ただ、公孫賛はここに違和感を覚えていた。
 やけにあっさりと退却する様を見て、長い間防衛戦の空気に触れてきた武人の勘とでも言うべきか、追撃をすぐにかける事は止め、斥候を放って辺りを調べさせた。
 彼女の勘は当たっていた。
 案の条、左右には伏兵が潜んでおり、追撃を仕掛けていたならば左右からの挟撃と反転逆撃で甚大な被害を被っていただろう。
 袁紹軍の最初の策は失敗に終わった。
 麗羽本人を囮とする事で、初めの野戦での勢いを挫かれた様を見せて引き込みを行い、釣られた敵にも大打撃を与えるつもりだったが叶わなかった。
 しかし、実の所袁紹軍としてはそれはどちらでもよかったのだ。
 破竹の如き勢いでそのまま進軍するよりも、公孫賛は容易な相手では無い、油断を持ったままで戦うべきではないとの意識を植え付ける為にわざと退却を行うのも手の内の一つ。
 第一の関にも大多数の兵を残しており、初めから物量で無理やり押し切る事も可能ではあったが今回の策を取った。
 どちらも麗羽が出陣前に聞いておいたこの場にはいない一人の少女の策であり、今回共に戦に来ている郭図もこれを是とした。
 郭図は、二人の仲の悪さから勘違いされやすいが、別に夕の言を全て跳ね除けるわけでは無い。
 彼も軍師であり、有用であれば誰のどんな策であろうが用いる。その有用な策の範囲に外道策も入っていて、そして自身の考え出したモノの方が有用だと判断すれば押し通そうとするだけなのだ。
 袁家という膨大な人間が集まる場に於いて、何の才能も無しに筆頭軍師に上り詰めることが出来たわけでは無い。
 そんな彼は今回、大して目立った動きは行っていなかった。
 麗羽が何か策は、と聞いても機が来るまではこのまま戦い続けましょうと言うのみで、彼らしくない真っ直ぐな戦の行い方をしている。
 明はそこに耐えようもない不信感を抱いていた。
 何故、この男が正々堂々などという自身の常道とはかけ離れた行いをしているのか。
 渦巻く不安は時間が経とうとも拭えず、せめて何事にも対処できるように彼女は先陣に志願した。
 そのまま何度かの野戦を繰り返しはしたが、両軍共に一進一退の攻防を繰り広げており、この戦は長くなると誰もが考え出した矢先、一つの事が起こった。



「兵の補充も滞りなく、陣の強化も万全。本城からの糧食の予備の補充分も
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