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ハングリー=アイズ
ハングリー=アイズ
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            ハングリー=アイズ
 アメリカサンフランシスコ。アメリカの中でも有数の港街だ。港には船が途絶えることなく入って来る。今も汽笛が夜の闇の中に聞こえる。
 闇の中に時折光が見える。船と灯台の灯りだ。遠くからの光だがよく見える。まるで宝石みたいだ。そう、本当に宝石によく似ている。色とりどりで綺麗だ。いつもはそれを見て癒されるのに今は憎らしくて仕方がない。
「チッ」
 俺は懐にあるその宝石を取り出して舌打ちした。オニキスだ。彼女の誕生石だった。そう、だった。
 俺は今港にいた。前には海が広がり暗闇の中に波の音だけが聞こえる。横には倉庫が立ち並んでいる。サンフランシスコだけあって馬鹿でかい倉庫だ。だが今の俺にはそんなことはどうでもいい。
 今の俺にとってはあいつだけが全てだった。やっと貯めた金をはたいて買ったこのオニキスもあいつの為だった。何もかもあいつの為だった。
 しかしそれはもう終わった。終わっちまった。俺とあいつは今日終わった。それも突然にだ。
 夕方まで働いてグリースにまみれた作業服のままでオニキスを買いあいつの部屋に向かった。だがそこには誰もいなかった。代わりに不審に思う俺にあいつの隣の部屋の女が声をかけてきた。何をしているのか知らないがやけに派手な格好の女だ。バーでホステスをしているのかとは思っているが。違うかも知れない。その女が俺に声をかけてきた。
「あんたね」
「何かあったのか?」
 俺は女にそう尋ねた。
「ああ」
 女は沈んだ声でそう答えた。いつもは図々しい程明るい態度なのに今は違っていた。俺はそれを聞いて胸騒ぎが起こった。それはあっという間に俺の胸を覆っちまった。
「病院に行ってあげな」
「病院!?何があったんだよ」
 その時の俺の声はかなり焦ったものだったのだろう。胸騒ぎが胸から飛び出そうだった。
「教えろよ、何が」
「ああ」
 俺に肩を掴まれて問われ女は頷いた。そして答えた。
 話を聞き終え俺はバイクに飛び乗った。自慢のナナハンだ。日本のバイクらしい。カワサキかホンダかは知らねえ。だがアメリカのバイクより乗り易い。俺はこっちの方が気に入っている。それのエンジンにキーを入れた。だが上手く入らない。それを見てまた焦った。
「くそっ」
 いつもは入る筈なのに入らない。何か手が上手く動かない。それを見てまた焦る。焦りが止まらなかった。
 やっとバイクのアクセルをふかし走りはじめても焦りは止まらなかった。いや、胸騒ぎと一緒にでかくなる一方だった。俺は信号も何もかも無視してそのまま進んだ。女に教えてもらった病院に向かって。
 何処をどう言ったのかまったく覚えちゃいねえ。気がついた時には病院に着いていた。バイクから飛び降りてそのままあいつ
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