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渦巻く滄海 紅き空 【上】
八 写輪眼
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皆さん方は上のほうに移動してください」
そう促すハヤテの言葉に従い、サスケとヨロイを残してその場の下忍は二階に続く階段に向かって歩き出す。階段の上には、闘技場の内部をぐるりと囲んでいる手摺を備えた観覧席があるのだ。

ナルトに従い階段のほうへ足を運ぼうとしていた多由也は、自分の後ろをついて来る男に気づくと顔を顰めた。
「なんだ、アンタ…」
我慢出来なくなった多由也が真っ先にその男に声を掛ける。その男の容姿はありきたりで、加えて地味な顔立ちをしている。よく言えば穏和そうな人、悪く言えば影が薄い大人だ。
「全く…君は大人にもそんな口の利き方するのかい?呆れるよ」
多由也の言葉に、その男は穏和そうな人柄とは裏腹に毒舌をふるった。そのよく聞く物言いを耳にして、多由也は思わず声を荒げる。
「お前…っ!?君…」
「多由也。落ちつけ」
だが咄嗟にナルトによって口を押さえられたため、彼女は声を上げずに終えた。
「俺が頼んだんだよ。俺達の班の担当上忍は架空の人物写真で登録したからな」
「試験についての説明前に、ナルト様から写真が載った文書を頂いたんだよ」

担当上忍を振舞っているこの男は、多由也の察しの通り君麻呂が変化したものである。ナルトが手渡した文書に載る写真の男に成り済ましているのだ。
落ち着きを取り戻した多由也から手を放し、ナルトは二人を促して階段を上がる。
傍の下忍達に自分達の会話が聞き取れないであろう場所まで移動すると、多由也は息急き切って問い掛けた。

「じゃあ予選を辞退したのはこの男に変化するためかよ?」
「いいや…それ以外にも理由はある」
多由也の問いに、君麻呂ではなくナルトが静かに答えた。
「君麻呂が病気なのは事実だ。そして…病気でなければ大蛇丸の器となっていた事もまた事実だ」
「大蛇丸様がココにいるってのかよ!?」
「そこにいるだろう。ドス・ザク・キンの担当上忍だよ」

はっと顔を上げた多由也と君麻呂は、気づかれないよう流し目でドス達のほうを見る。そこには音隠れの額当てをした男が、闘技場の中央でヨロイと対峙しているサスケを舐めるような視線で見つめていた。

「……つまり大蛇丸様に見られているこの状況下で、僕が闘うのは得策ではないと…?」
「お前が不治の病と発覚したから、うちはサスケに大蛇丸が標的を定めたんだろ?予選で暴れてみろ、すぐにお前の身体に転生されるぞ。それに今は俺が作った薬で抑えられているが、お前の病気はいつ発症するかも解らない厄介な代物だ。おとなしく観戦してくれ」

ナルトにそう言われてしまえば、君麻呂も多由也も返す言葉がない。むしろ崇拝する彼が自分の身を案じてくれたと君麻呂は歓喜する。
傍目には大の大人が喜んでいる様なので、多由也は君麻呂を白い目で見た後、何事も無かったかのようにナ
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