暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのはStrikerS 〜困った時の機械ネコ〜
第2章 『ネコは三月を』
第27話 『それは秘密』
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 六課の人たちが使用している寮にも数台のテーブルが用意されている休憩所がある。ここは就寝前の談話や自由待機(オフシフト)の時間潰しに利用されていたりするのだ。
 スバルたちは着替えを済ませた後、隊舎の食堂へ揃って移動しようと休憩所を横切ろうとしたとき、見覚えの無い臙脂(えんじ)色の髪が自分の視界ぎりぎりに入った。いつもないものがそこにあると違和感を覚えるのは大抵の人間で、スバルたちも不思議に思い、そちらを向く。


「ん、顔だけでなく、身体もこちらを向けてくれると嬉しいね」
『し、失れ――』
「敬礼は結構。今日は『公』ではなく、『私』で来ているのだから」


 制服を着なければ、30手前の若造にしか見えんよ。と、新人たちを(たしな)める。
 ジャニカはシャツの袖を2、3度捲くっており、脚を組んで、ポケットに入るくらいの本を読んでいる。スバルたちが身体を向けると、そこで初めてスバルたちのほうに目線を上げて、本を閉じた。


「揃って、夕食かい?」
『はい』
「もし、急がないのであれば、暇つぶしに付き合って頂けるかな? 謝礼もだそう」
「それは構いませんが、謝礼は、その、結構です」


 ティアナの言葉に皆が頷いて、ジャニカの傍まで近付くと、彼は柔和に席を促し、席に着く。
 ジャニカの暇つぶしであるスバルたちとの会話は、コタロウという話題を出さない六課での仕事内容であった。「情報機密を話さないよう言葉を選ぶように」とジャニカは新人たちの話術の難易度を上げ、それぞれの難度にあった質問を、ティアナを筆頭に質問をしていった。
 ただ、


「さて、新人唯一の男性エリオ・モンディアル君」
「は、はい!」
「周りが女性ばかりで、モヤモヤしないかい?」
「モ、モヤモヤッ!?」


 エリオに限っては、分野の違う質問をにやにや口の端を上げて質問をする。
 ひくっと肩を上げて一歩二歩を後ずさり、腕の何処に収めてよいかも分からないといった様子で、わたわたと挙動するエリオの顔は熱気に当てられたように赤面した。


「え、いや、あの」


 エリオより年上のスバルとティアナは一瞬ぽかんとしたものの、興味本位からか、あえて笑顔がでないように、不思議な顔をするキャロを同じ表情を装い、エリオの顔を覗き込む。
 そのうち、ジャニカは堪えきれなくなったとばかりにクツクツ笑い出し、


「ひとまず、その表情は『羞恥』からくるものとしておこうか」
「……ひ、ひとまず、じゃ、ないです。本当に――」
「まぁ、質問が不明瞭の場合、解釈の仕方は色々あるな」


 エリオは『よからぬこと』からではなく、『羞恥』から来ることを小さくもはっきりと答え、ジャニカはおどけるそぶりなく、目を細める。

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