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哀しくてジェラシー
第三章
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第三章

「何だと思ってるんだ」
「また浮気かと思って」
「いい加減にしろ」
 心から言ってやった。本気だった。
「あのな、俺はな」
「浮気したことないっていうの?」
「ああ、ない」
 少なくともそれはない。俺自身お世辞にも褒められた人間ではないとは思っている。しかしそれでも浮気は嫌いだ。これは誓ってもいいことだった。
 しかしだ。こいつはというとだ。俺はそっくりそのまま言い返してやった。
「そういう御前こそな」
「何だっていうのよ」
「一体誰の曲を入れてるんだ?」
 そのことを聞いてやった。丁度今曲を入れているところだった。
「ジャニーズか?」
「悪い?」
「またおっかけかよ」
 そのことを聞いてやった。
「またかよ」
「悪いの?女がジャニーズ歌って」
「よく歌えるよな」
 皮肉じゃなかった。ストレートな気持ちをぶつけてやった。
「本当にな」
「何よ、その言い方」
「追っかけとかやってるのかよ」
「CDとかDVDは買ってるわよ」
「俺よりもそっちの方がいいのかよ」
 俺にとってはそれがかなり不愉快だった。俺だけを見ていればいいのにアイドルなんかに御執心だからだ。ふざけるなとさえ思っている。
「本当によ」
「いいじゃない、アイドル位」
「いい訳ないだろうがよ」
 曲は無理矢理終わらせてそのうえで女のアーティストの曲を入れてやった。俺が歌うのは小田和正やそういった歌手だ。何はともあれそうした歌を歌った。 
 カラオケで歌って酒も飲んで。それから気分よく外を出た。ここで俺はこいつの方に顔を向けて尋ねてやった。まだ少し頭にきた顔でだ。
「おい」
「何?」
「これから暇か?」
 このことを問うたのである。
「若しかしたらな」
「暇だったらどうだっていうの?」
「俺の部屋に来るか?」
 こう言ってやった。
「今からな」
「あんたの部屋になの」
「ああ。どうなんだ?」
 そのことを尋ねてやった。
「俺の部屋にな」
「別にいいけれど」
 返答はこれだった。
「私も今日暇だし」
「いいのかよ」
「ええ、いいのよ」
 また言ってきた。
「私も。その」
「その?何だよ」
「今日は少し寂しい気分だし」
「寂しいのかよ」
「ええ、だからね」
「わかった」
 俺はその言葉を聞いて頷いてやった。実のところ今日は俺も一人だと寂しい感じだった。それで誘ってやった。とはいってもこれは言わないがだ。
 そうしてだった。俺はまた言ってやった。
「じゃあな」
「ええ、それじゃあね」
「行くか」
「それでどうするの?」
「二人でいれば充分だろ」
 俺はまた言ってやった。実際にそう思っていた。
「それでな」
「そうね。二人でいればね」
「他には何もいらないんだよ」
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