暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第四十二話 密談
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
行われるのは五十年後だろう。彼らの統治を受ける領民達が納得すると思うか?」
「……無理だろうな」
フェルナーが力無く首を横に振った。

「何らかの形で貴族に罰を与えなければならない、目に見える形でだ。そして帝国の財政を好転させる必要が有る。先日の貴族の救済だが平民達は決して快く思ってはいない。帝国が混乱するよりはましという事で仕方なく納得しているだけだ。今また融資を引き揚げれば混乱すると言ってそれを認めれば如何なる? 平民達は政府は貴族に甘い、自分達にその分の皺寄せが来ると不満を持つだろう。そして貴族達は改革など掛け声だけだ、自分達は何をやっても許されるのだと思いかねない」

フェルナーの表情が暗い、俺も同様だろう。俺もフェルナーも平民に生まれた。そして俺達は士官学校に入り士官になった、それなりに昇進もした。平民としては十分に恵まれた方だろう。だが帝国には俺達よりもはるかに劣悪な状況にある平民が居るのだ。彼らの統治者に対する不信感を甘く見るのは危険だ。

少しの間、沈黙が落ちたがフェルナーが“喉が渇いたな、水を持ってくる”、そう言って席を立った。広い屋敷だ、戻るまでに十分はかかるだろう。本当なら対策を考えなければならないのだがどうにも考える気になれない。馬鹿で無責任な貴族が不始末をしでかし平民の俺が後始末を付けるために苦しんでいる。馬鹿げている、フェルナーが戻って来るまで溜息ばかりが出た。

「いっそ貴族達から領地を取り上げたらどうだ」
戻ってきたフェルナーが水の入ったグラスを俺に渡しながら言った。冗談かと思ったが目が笑っていない。
「本気で言っているのか? 随分乱暴な意見だが」
「乱暴かもしれないが問題の本質は突いているだろう。領主としての責任感と義務感の無い連中が領地を持っている事が問題なんだ。それを解消すれば良い」
「なるほど」

確かにそうだ、問題は貴族に有るのではない。正確には領主として不適当な人間がその地位に有る事が問題なのだ。
「連中から領地を取り上げれば領民だって納得するさ」
「帝国の直轄領にするという事か」
「ああ」

悪い考えではない、直轄領にするという事は税の増収が見込めるという事だ。しかも一時的なものではなく恒久的に見込める。開発も政府主導で行えるのだ、領民達も納得するだろう。そして貴族達の力が弱まり政府の力が強くなる。原作に近い考え方だな、貴族達が消え去り領地が帝国の直轄領になった。問題は貴族達が納得するかどうかだ。当然反発するだろう、混乱を最小限にするにはその反発を減らす必要が有る……。

「もう一捻り要るな、アントン。貴族達の反発を少なくする何かが」
フェルナーの顔を見た。
「そこは卿が考えてくれ、俺にはこれが精一杯だ」
「……」
また溜息が出た。こいつ、肝心なところで役に立
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ