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誰が為に球は飛ぶ
焦がれる夏
拾玖 互いにしぶとく
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してここでまた要注意の打者を打席に迎える。この日の御園は、真司の投球に狙いが絞れず全くタイミングが合っていない。しかし、この打席に入る表情には一段と気合が入っていた。


「「「ガキの頃 テレビで見た
特大ホームラン 甲子園の舞台へ
誓った思いは忘れちゃいないぜ」」」


応援席も声が一際大きくなる。


(……大丈夫。この人を抑えれば、また流れはこちらに来る!)


真司は振りかぶって、果敢に投げ込む。

(何度も何度も公立のエースに良いようにされてたまるかァ!)

御園も渾身のフルスイングでそれを迎え撃った。



ーーーーーーーーーーーーーー


「カァーーン!」

今度の打球音には、真司はマウンドで大きく目を見開いた。振り返って打球の行方を見ると、白球は大きな放物線を描いてバックスクリーンへと飛翔する。

深く守っていたセンターの剣崎はフェンスに背をつけ、体を伸ばすが、打球を見上げる事しかできない。バックスクリーンに当たった音が、その背後で響いた。


「うぉらぁあーー!!」


一塁ベースを回ったところで御園は飛び跳ね、拳を握りしめて吠えた。勝ち越しソロホームランは、バックスクリーンに飛び込む特大弾。
1-2。ついにネルフ学園が、真司が逆転を許した。


(……スイングに迷いが無かった。やめたんだね、配球を読む事を。素直に来た球を打ったんだ。)


薫は唇を噛む。今度の被弾は堪えたらしく、真司はガクッと肩を落とした。
守備陣にも、絶望感が漂う。ここにきてリードまで許してしまえば、鬼神のような投球を続ける御園を打たない限り敗北が確定する。
結局負けるのか……ここまで健闘したのに。


「カーン!」


気落ちしたネルフに、更に八潮第一打線が襲いかかる。5番の須田がレフト線に二塁打を放ち、三点目のチャンスを作る。

「タイムお願いします。」

薫がたまらずタイムをとり、マウンドにネルフナインが集まった。

ーーーーーーーーーー

「あちゃー、こりゃまずいわね……」

ネルフ学園の応援席では、美里が唇を噛んでいた。ここまで善戦しただけでも良い方だろう。しかし、ここまで健闘したのだから、勝って欲しい。勝たせてあげたい。


「シンジーーッ!!しっかりしろォー!」

応援席の隅で、立ち上がって叫んだ男が居た。
それまでずっと座っていた、黒ずくめの服に、顎髭が豊かな男。碇玄道。真司の義理の父親だ。
一緒に住んでもいない義理の息子の為に、玄道は叫ぶ。力一杯。

「「「頑張れ頑張れネルフ!!
頑張れ頑張れネルフ!!」」」

応援団が総立ちで、マウンド上に集まったナインに声援を送る。

「碇君……」

玲は両手
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