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あの娘とスキャンダル
第四章

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第四章

 電車が来た。それに親友とあいつも乗った。これで本当にだった。
 お別れだった。あいつは電車の席から俺に言ってきた。
「幸せになってね」
「御前もな」
 俺は笑顔で告げた。それで終わりだった。
 最後の言葉はこれだけで。微笑みを浮かべ合って涙は隠して。それで言い合ってだった。
 俺達は別れた。何もかもが終わりだった。電車は出発しすぐに俺達の視界から消えた。それで全部終わった。
 電車が消えた線路を見ていると。彼女が俺に言ってきた。
「帰ろう」
「ああ」
 俺は線路を見たままその言葉に頷いた。
「俺達の場所にな」
「もうすぐはじめての出勤よね」
 また彼女から言ってきた。
「頑張りましょう。最初が肝心だからね」
「そうだよな。まず最初にびしっとしないとな」
「だから頑張ろう」
 こう俺に言ってきていた。俺もその話を聞いている。
「それで本当に落ち着いたらね」
「結婚。するか」
「それで幸せになろう」
 彼女からだった。まただった。
「二人でね」
「あいつ等も言っていたしな」
 あえてあいつとは言わなかった。言えなかった。
「それならな」
「そうよ。まずはね」
「まずは?」
「帰ったら何食べる?」
 食べ物の話になった。気付くと。
 周りの景色が赤くなってきていた。さっきまでとは違って何もかもが赤くなってきていた。夕方になっていた、その時間になってだった。
「何が食べたいの?」
「ラーメンか?」 
 俺は彼女に顔を向けて答えた。
「ラーメンにするか」
「ラーメン?」
「食いに行かないか?ラーメン」
 微笑んで彼女に顔を向けて言った。
「今からな」
「ラーメンだったら作るけれど」
「作ってくれるのか」
「インスタントよね」
「ああ、それで頼むな」
 作ってくれるならそれでよかった。二人ならならよかった。
 その話をしてだった。俺は。
 自然にだ。こんなことを話した。
「今までは四人だったけれど二人で食べるんだな」
「そうよね。これからはね」
「寂しいか?いや、寂しくなんかないな」
 どうして寂しくないか。それは。
「ずっと一緒だからな」
「そうね。一緒にね」
「ずっと一緒に。ラーメンでも何でも食べような」
「そうしよう」
 こうした話をしてだった。俺は。
 幸せになろうと思った。それも絶対に。それがあいつにとってもいいと思ったから。あいつの一番大切な友達の彼女とだ。そうなろうと誓った。夕方の中で。


あの娘とスキャンダル   完


                  2011・6・3

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