暁 〜小説投稿サイト〜
悲しみのヴァージンロード
第一章
[1/2]

[1] 最後 [2]次話

第一章

                      悲しみのヴァージンロード
「じゃあね」
「ああ」
 俺達はお互いに。夜の街で。
 別れの言葉を言い合った。原因は。
 最初からわかっていたことだった。俺は彼女がいて。彼女にもいた。
 どっちもそれなりに複雑な立場だった。
 俺の家は普通のバイク屋だ。けれど小さい頃から結婚する相手は決まっていた。
 幼馴染み、その相手と結婚することが決まっていた。そして彼女は。
 所謂いいところのお嬢様で婚約者がいた。何でも相手はとんでもない大金持ちらしい。その相手と結婚することがもう決まっていた。
 けれど俺達は。カレッジのパーティーで出会っちまった。
 最初そのパーティーに行ったのは。嫌々だった。
 俺は不平を言いながらそこに向かっていた。
「相手はあれだろ」
「ああ、あのお嬢様学校な」
「あそことな」
「何でだよ」
 俺は仲間達に言った。その不平を。
「そんなお高くとまったところとな」
「そんなに嫌か?」
「お嬢様とのパーティーは」
「俺達はあれだぜ」
 俺は言ってやった。
「ロックだろ、ロック」
「ああ、そうだよ」
「俺達はロックだよ」
「それが俺達だよ」
「それでバイクに乗ってな」
 俺の家の仕事だから。これは余計に意識していた。
「派手に騒いで遊んでだろ。パーティーだってな」
「じゃあ社交ダンスとかもか」
「嫌か」
「考えたこともないな」
 実際にその通りだったそんなのはやったこともない。
 だから俺は。パーティー会場の俺達のカレッジのホールに行く間もだ。不平不満たらたらだった。それで俺はこんなことも言った。
「何だ?向こうにいるのはワスプか?」
「おいおい、学のあること言うな」
「ワスプかよ」
 ホワイト、アングロサクソン、プロテスタント。俺達の国アメリカの所謂上層階級になっている人種だ。ピリグリムファーザーズの頃からだ。
「そればっかりだっていうのかよ」
「相手は」
「違うのかよ」
 俺は偏見から言ってやった。
「ワスプの気取ったお嬢様ばかりだろ」
「で、俺達はっていうと」
「それに対して」
「そう言うんだな」
 俺はイタリアンだ。仲間も見れば。
 メキシカンにアイリッシュ、それに黒人、そうしたアメリカじゃ今一ついい立場にいない連中ばかりだ。ワスプの奴等とは全然違う。
 だからだ。俺は言ってやった。
「俺達にワスプの空気は合わないんだよ」
「ロックにディスコのダンスにだよな」
「ビールに安いカクテルにハンバーガー」
「フライドチキンにホットドッグか」
「そんなので充分だろ」
 俺は言い続けた。
「パスタにピザなら俺が作ってやるさ」
「言うな。そこまで嫌か」
「お嬢様達とのパーティーは」

[1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ