暁 〜小説投稿サイト〜
誰が為に球は飛ぶ
青い春
捌 大人と子どもと
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話




甲子園にでもしておくか。
多分日向もそう言うだろ。




ーーーーーーーーーーーーー

「ふぎぃーーーっ!!」
「息を止めるな。呼吸しながら動かさんと、血管が千切れるぞ」

ネルフ学園の、無駄に設備が充実したウェートトレーニング場で藤次のうなり声が響く。加持はウェートトレーニングに励む野球部員の間を回りながら、フォームや呼吸法について助言を与える。選手12人全員が何かのメニューに取り組み、ローテーションでどんどん種目が変わっていく。休憩時間までもがキッチリ計算され、休みすぎる事もなく、筋力トレーニングでも息が皆上がっていた。

数日前、ウェートトレーニングがやりたいと言った日向に応えるように、加持がメニューを組んできた。加持はどんな練習をするかについては殆ど口は出さない。「こんな練習がしたいんですが…」と日向が尋ねた時にだけ、案を出し、環境を整え、その練習を手伝う。
極端な話、「明日は練習休みます」と言っても加持は「そうか」の一言で済ましてしまう。
試合の作戦も一切を選手に任せ、任せている以上何の文句も言わない。加持は文字通り、「顧問」だった。



(でも、この人が提案してくる練習、それ自体は割と厳しいんだよなぁ。)
息を切らしながらシットアップをこなす日向は、横目で加持の姿を見ながら内心思った。
チームの構成や方向性、戦術に関してはほぼ全て日向に丸投げの割には、加持は個人のプレーには「もっとこうした方が…」と助言を与える事が多い。個人の資質を引き出す事に関しては加持は熱心だった。上から引っ張るというより、下から押し上げる。そんな指導者に日向は初めて会った。

(もう少し、一緒に熱くなってくれると良いんだけどなぁ)
加持の思いはいざ知らず、日向は加持の態度が少し物足りない。勝ち負けに頓着しない加持は、自分からは遠い存在のように思えてしまう。自分達が拘る野球の勝負とは、また違うものを加持は見ている。自分達の事を一歩引いて見ているような気がするのだ。勿論色々と協力はしてくれるのだが…




日向はそれが無意識のうちに加持に、いや大人に甘えたがっている事だということをまだ知らない。






[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ