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MARRY ME TOMORROW
第三章
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第三章

「行くぜ」
「うん」
 花束を持ってあの丘の上に行く。彼女がいる丘に。もう僕達は話はしなかった。そのまま無言で丘に向かった。暫くして丘が見え、その側の駐車場に入って丘を昇る。僕達はここでようやくまた口を開いた。
「同じ丘なんだよな、本当に」
 最初に口を開いたのは僕だった。プロポーズしたのも。オーストラリアに行くことも伝えたあの丘だ。けれど今行く場所はあの時僕達がいたあの場所じゃない。同じ丘でも違う場所だった。
「それはそうだな」
「けど。行く場所は違うんだね」
「そうさ、わかってると思うがこっちだぜ」
「うん」
 指差した方に顔を向けた。そこは僕達がかっていた場所とは別の場所へと向かう坂道であった。
「ここにな。いるから」
「そっちか」
 それを聞いて僕は本当にもう彼女がいないのだと思うようになっていた。そちらに行くのならば。どうしてもそれを思わずにはいられなかった。
 坂道を昇る。道自体は緩やかだ。それでも。足を踏み出す僕の気持ちは軽くはなかった。
 行きたくはなかった。けれど行かずにはいられい。僕はその相反する気持ちを一緒にして坂道を昇った。そして。遂にそこに辿り着いた。
「そこだよ」
 彼が手で指し示して教えてくれた。丘の端にそれはあった。
「あいつ、クリスチャンだっただろ、それで」
「こんな石なんだね」
「ああ」
 見ればそれは普通の墓石じゃなかった。ヨーロッパなんかで、オーストラリアでもよく見る形の石だった。僕はそれを見て本当に彼女がいなくなったことがわかった。
「あのさ」
 僕は花束を両手に持っていた。そして友達に声をかけた。
「何だ?」
「暫く。一人にしてくれないか?」
「一人にか」
「ああ、いいかな」
「いいぜ」
 彼はにこりと笑ってそれに頷いてくれた。
「じゃあな。車の中で待ってるからな」
「うん」
 彼は先に丘を下りた。二人にしてくれたのだ。そう、僕達は今二人になった。丘の上でまた二人になった。僕はゆっくりと彼女の側に足を進めた。そして。
「来たよ」
 彼女に声をかけた。けれど返事はなかった。
「帰ってきたよ。色々とあったけれどね」
 彼女に対して言う。けれど。やっぱり眠っている彼女からの返事はない。何もなかった。
「それでさ」
 それでも言った。言わずにいられなかった。
「あの時、はぐらかされたけど覚えてるかな」
 プロポーズのことを。僕は言った。
「笑って誤魔化されたけど。今言うよ」
 丘の周りには緑の草木が生えていて下には青い海と白い街並み、そして港と船が見えている。僕はそちらには顔を向けてはいない。けれどはっきりと見えていた。僕の心に。それは汽笛の声と共に、彼女の顔と共に僕の心に見えていた。僕は今あの時に戻っていた。
「結婚しよう
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