暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
Last Fight
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鼓膜を震わせた。

『コロサ………ナイノカ……?』

泣きじゃくる子供が放ったようなその声に、レンの表情は次々と変わった。

憤激、同情、哀れみ、悲しみ、諦め。

半開きの唇が、幾度となく開かれ、そして閉じる。

喉元まで出掛かっている言葉は数百もあって、一言ではとても言い表せなかった。

しかし、少年は言う。

《冥王》は、言う。

人外のその口から紡がれた言葉は、もう理解不能な言語でもなければ、金属質のノイズが混じった声ではなかったけれど、少年は、レンは、それを全く気に留めずに口を開いた。

「あぁ、殺さない。だけど僕は、キミを絶対に許さない」

許さなくて、赦せない。

そこまでレンは、お人好しにはなれない。

自分は《甘い》のだけれども、《優しい》のではないのだから。

「だから、僕はキミを()()()()()()()。キミの神経が擦り切れ、焼け切るまで僕の中で生き続けてもらう」

いや、”逝き”続けてという方が正しいか。

その言葉に、漆黒の眼球は慄いたように身を震わせた。

『マサカ……僕ヲ!僕ヲ喰ラウ気カ!?正気ナノカ!モウオ前ニハ兄様ガ憑イテルンダゾ!!ソンナコトガ人間ノ身デデキルワケガ────』

叫ぶ《鬼》の搾りかすに、レンは言う。

人外の者は、言う。

「お生憎さま。僕はもう、人間じゃないから」

『……………………………』

沈黙を肯定と受け取り、レンはさっさと眼球の上に手のひらを乗せた。

もう、反撃はなかった。

ただただ項垂れた子供のように、いじけている少年のように、成すがままとなっている。

ポウ、と手のひらに灯りがともる。

それはとても温かい光で、二人の《化け物》の冷え切った心の奥底まで染み渡るようだった。

「僕の中に、来い。狂楽」

『………………………クソ、ガ』

その言葉とともに白い光が暗闇を破り、世界を照らした。

数瞬後に宙空にいたのは、レン一人だけだった。

その後、いまさらのように重力が仮想の身体を引っ張り、地面に向かって落下していく。

異形の《翼》と《尾》は、もう消えていた。

もう、もともとある妖精の翅を動かすための力さえも出ずに、レンは地面に向かって落下していく。

暗闇の中にある地面に落ちていく。

その先にあるのは、白衣の女性と黒衣の剣士、その腕の中で気を失っている女性。

そして────



大粒の涙を零しながら手を振る、真っ白な少女。



ああ、という声が意図せずして口許から漏れ出た。

どうしようもなく喉が震え、目頭が熱くなる。目尻には、もうすでになみなみと涙が盛り上がっていた。


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