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TOKYO CONNECTION
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[9] 最初
か彼女が哲学科出身だとは。それは夢にも思わなかったことだった。
「本当よ、何なら卒業証書見る?」
「いや、いいよ」
 そこまでして確かめる気にはならなかった。彼女が本当だと言うのなら本当なんだろう。それにそこまで深入りするのはこの街の流儀じゃない。絆なんてこの街じゃ真剣な恋愛と同じ価値しかないものだ。強く触れば壊れてしまうような脆い存在だ。そもそもそんなものがあるかどうかすら怪しい。
「で、これからどうするの?」
「そうね」
 俺にそう問われて考える顔になった。だがやはり哲学的な顔ではなかった。
「家に帰るわ」
「送ろうか」
「いいわよ、そんな」
 彼女は首と右手を横に振ってそれを断った。
「車も運転できないでしょ、今は。だからいいわよ」
「じゃあ電車で帰るんだね」
「ええ」
「僕もそうさせてもらうよ」
「貴方も電車で?」
「うん。どうせ今は何もすることはないし」 
 もうすぐ空が白くなる。夜が更けようとしていた。
「始電に乗ろう。途中まで一緒だったね」
「ええ」
「途中までね。それからは知らないけれど。それでいいかな」
「いいわ」
 彼女はそれに頷いた。そしてまた俺の側に来た。
「じゃあ行きましょう、駅まで。そして」
「うん。そこから途中まで一緒にいよう。隣同士でね」
「たまにはそんな高校生みたいなデートも悪くないわね」
「たまにはね」
「ふふふ」
 こうして俺達は駅に向かった。ここから渋谷の駅まで結構あるが酔い覚ましには丁度よかった。
 そして電車に乗った。途中まで静かなデートだった。たまにはこんなことがあってもいい。どうせこの街では真面目なことはタブーだ。じゃあこれも仮初めの夢だと思うことにした。



TOKYO CONNECTION    完



                2005・3・27
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