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ドリトル先生の来日
第二幕 日本という国をその十

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「日本に行くかどうかも」
「ああ、丁度いいね」
「そうですね、神様が用意してくれたんですかね」
「そうかも知れないね」
 先生はトミーの話に笑顔で応えました。
「丁度いいね、じゃあ日本に一緒に来るかい?」
「ただ、お金が」 
 トミーはここで困った顔になりました、その顔で先生にお話します。
「今も家の仕事も手伝って時間があると働いていますけれど」
「それでもなんだ」
「学費を用意するのが大変で」
 それでだというのです。
「日本に行くのも」
「ううん、それじゃあ」
「お金が第一ですからね」
 このことはどの国でも同じです、イギリスでも。
「どうにかなればいいですけれど」
「王子はまた違うからね」
 一刻の跡継ぎです、ですから国からお金が出ているのです。ですがトミーは普通の靴屋さんの息子さんなので。
「自分の家で何とかしないといけないね」
「日本に行くとなると高いですね」
「大学でお話してみるかい?そのことも」
「そうですね、それじゃあ」
 トミーはこう言ってです、すぐにその足で大学に向かいました。先生はトミーの背中を心配そうに見送ってから動物達に言いました。
「トミーも一緒じゃないとね」
「そうそう、いつも一緒だから」
「南米に行った時からね」
 動物達もこう先生に言うのでした。
「トミーまでいないと」
「僕達も寂しいよ」
「どうにかなって欲しいね」
 先生は不安な顔でこうも言います。
「僕達だけで日本に行ってもね」
「寂しいよ」
「完全じゃないよ」
「トミーも家族だからね」
「今は別々に暮らしてるけれど」
「うん、神様にお願いしようか」
 先生はここでも神様のことを思うのでした。
「そうしようか」
「こうしたことだけは神様しかどうにか出来ないからね」
「人間の巡り合いとかは」
「人間は偉くとも何ともないんだよ」
 これは先生の考えです。
「他の動物達と一緒だよ、神様の前ではね」
「ほんの小さなものだよね」
「どの生きものも」
「そうだよ、皆一緒なんだよ」
 先生は人間だけが偉いとは考えていません、そして人間の間にも誰が偉いとかいう考えも全くないのです。
「髪の毛や肌や目の色、仕事で決まらないよ」
「決まるのは心だね」
「心で決まるんだよね」
「そうだよ、全部ね」
 人間はそれで決まるというのです。
「人間は心だよ」
「そうよね、偉い人でも悪い人はいるし」
「先生みたいな人もいるから」
「僕なんて全然偉くないよ」
 先生は自分で自分のことをこう思っているのです。
「仕事も来ない、お金もないのに」
「本当に皆神様の前だと小さいね」
「一緒のものだね」
「そのことを忘れたらいけないんだよ」
 皆にこうも言う先生でした。
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