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“死なない”では無く“死ねない”男
話数その7 経たない
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考え足りんかった……」
「「「―――――は……??」」」



 ――――物凄く間の抜けた内容の言葉が後ろから聞こえ、振り向いた彼等が目にしたものは……傷など最初から無かったかのように、穴のあいた本を回転させながら放り投げている“晋”の姿だった。


「……てか、この本高かったのになぁ……何千円したっけ? ……なぁお前ら―――いや、知ってる訳ないわな、アホか俺」


 晋はそれだけ言うと立ち上がり、欠伸をしながら教会に背を向け歩き出す。


「今、貫いたっすよね……貫いたっすよね?」
「……あ、ああ。その筈だ」
「ならなんで動いてるっすか!? 何でなんすか、カラワーナ! ドーナシーク!」
「わ、私が知るかっ!!」
「……私にも、分からん……」
「こうなったら―――死ぬまで投げ続けてやる!!」



 そう言うや否や、堕天使達は次々と光の槍を作り出し、次から次へと投げつける。しかし、投げつけられている当の本人は、槍なんざどうでもいいと言わんばかりにずっと歩き続けており、刺さった傷も瞬く間に治っていく。


 最初の内は必死に投げ続けていた堕天使達だったが、段々と投げる数も速度も落ち、ついには投げる事すら放棄して晋が歩き去るのを呆然と見ていた。
 投げても投げても投げても投げても……どれだけ投げて刺さっても一向に終わりが見えず、これ以上投げる事は無駄な気がしたからだ。


「なんだったんすか……あの男」
「知らん……だが、少なくとも“唯の人間”ではない」
「あのまま続けていたら……狂っていたかもしれん……」


 それだけ交わすと堕天使達は黙りこみ、もう点にしか見えなくなった彼を再び見やり、そして思った。“あの男の正体は……一体なんだったのだろうか”と。



 ―――――しかし、この後堕天使達は、その答えを知ること無くこの世を去る事になる。


 無論、そんなことは堕天使達も、ましてや晋ですらも知らない事であった。


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