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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
役者は踊る
第六一幕 「リタイア、そしてリスタート」
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ロットなど存在しない、欠陥機の風花がまともに戦えるはずがない』と・・・自社の作ったISとそのパイロットを同時に心の中で貶め侮っていたのです。これ以上恥ずべき行為がありましょうか?」

それはユウにはよく分からない、しかしきっと彼等技術者集団にとっては非常に重要な事なのだろう。
彼らは“作る人間”だ。物を作り、安全性や機能を確かめ、試行錯誤を繰り返した末にその製品を世に送り出す。それはきっと自社の製品を、そしてそれを作る自分自身を信頼していなければ出来ない。最上の製品は人が乗る製品。人の背中を預かるもの、言い換えれば人の命を預かる物作りをしているのだ。
人の命を預かる身が自社の製品と言える風花をどこか信頼していなかったというのは、言い換えれば自分の腕を信頼できていないことになる。そしてその信頼していない物を人に送りつけたのだ。送りつけた相手がそれを使いこなせないだろうなどと感じつつ、最悪の事態があるかもしれないと考えつつもそれでも提供したのだ。

「残間結章君。私は最上重工の代表として君に・・・そして君が背を預けた風花に深く詫びなければならない。我々は・・・技術士道不覚悟でした。大変申し訳ありませんでした!」

改めて深く下げられる頭。漸く彼の謝る理由をおぼろげながら理解できたユウは、一つ溜息をつくと共に社長を諭すように言葉をかけた。

「・・・・・・止めてください。僕には会社や技術屋のあれこれは良く分かりません。でも・・・フィンスラスターは追加で付けてくれたじゃないですか。あれには何度も助けられました」
「それは・・・しかし、あれは結局姿勢制御プログラムが間に合っていなかった」
「それでもです。たとえその3号機の為の時間稼ぎだったとしても僕は嬉しかった。風花だって嬉しかったはずです」
「・・・・・・」
「僕は風花を受け取り、あのISとならもっと高みへ行けるという確信を感じました。ですから、もしもそれでも自分が許せないようなら風花を改修してもう1度僕の所に持ってきてください。今度こそ、僕と風花を信頼して・・・だって、僕にはもう風花以外のパートナーは考えられませんから」
「・・・驥服塩車(きふくえんしゃ)などでは最初からなかった。1号は、いえ、風花は操縦者に恵まれていたのですね・・・」

社長はそれ以上語らなかった。その震える肩が何を示していたのかも敢えて語るまい。

この日より、最上重工の株価は急激な上昇を始める。それは極端かつ大胆な設計思想とそれを全面に押し出せる高い信頼性を持ったISを作り出した技術力に期待しての上昇だった。この陰に、最上重工IS開発部の二度と犯してはいけない過ちがあったことを知る人間は少ない。

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