暁 〜小説投稿サイト〜
気まぐれな吹雪
第一章 平凡な日常
35、霧と大空、ご対面
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
春が近づき、桜のつぼみが見えてきた頃、一人の少女が並盛の道を歩いていた。

彼女は三千院凪。

何度も通ったおかげか、不慣れなはずの並盛でさえ、地図を見ることなく歩ける。

向かう先はもちろん、要の家である。

ピンポーン

軽快なインターホンが鳴る。

「はーい」

が、そこに現れたのは、見覚えのない小さな男の子。

驚いて表札を見るが、そこにはちゃんと『霜月』と書かれている。

むしろ、何度も訪れているこの家を、見間違うはずなんてない。

どうしようかと迷っていたその時、奥からもう一人が現れた。

「お、凪じゃねぇか!」

エメラルドグリーンの短髪が特徴的なその人物は、確かに要だった。

だとすると、この子供は一体誰なんだろうか……。

「あ、えっと。こいつはコスモ、訳あって預かってんだ」

そんな凪の心情を悟ってか、要が慌てて説明する。

あらかた説明が終わると、コスモは可愛らしくにぱっと笑った。

「よろしくね、凪ねぇ!」

「凪ねぇ……?」

聞きなれない呼ばれ方に驚きながらも、凪は優しく微笑んだ。

「っと、そう言えばどうしたんだ? 用があんだろ?」

「うん。いい天気だし遊びに行こうと思って。よかったらコスモ君も一緒に」

コスモ君も一緒に。

この言葉に反応しないわけがなく、一気にコスモの目が輝き出した。

何も言わずとも目が語りに語りまくっているために、要は思わず苦笑を漏らした。

「じゃ、行くか」



†‡†‡†‡†‡†‡



「ぐはっ」

「要?」

「かなねぇ?」

場所は遊園地。

ここに来てからすでに四時間が経過している今、要は潰れていた。

理由は簡単。

この四時間、ひっきりなしにコスモに連れ回されていたからである。

ジェットコースター、コーヒーカップ、メリーゴーランド、お化け屋敷etc.

「かなねぇ、もう一回!」

「悪ィ……ちょっと、休む……」

「じゃ、一人で行ってくるね!」

言うが早いが、コスモは列に走っていった。

その姿を見送った凪は、心配そうに要を見た。

「要、大丈夫?」

実際問題、かなり心配だった。

彼女が相当なお人好しであることは知っている。

そうでなければあの日自分に声をかけることなんて無かっただろうから。

けれど、度が過ぎてしまえば、いつか自分で自分を殺してしまうんじゃないかと、それが心配なのだ。

しかしながら、要は小さく笑っただけだった。

「あいつさ、もう少しで死んでたんだ」

「え?」

突然切り出された話に、呆然としてしまう。

「車に轢かれそうになってた。周りの奴らは誰も助
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ