暁 〜小説投稿サイト〜
緋弾のアリア-諧調の担い手-
そして彼の道行きは
プロローグ
[1/5]

[1] 最後 [2]次話


???side
《???・???》


―――閉じていた意識がゆったりと、引き戻されて行く。

最初に知覚したのは、存在。
自分が自分であるという認識。つまりは存在の認識であった。

次に知覚したのは、五感だった。五感が正常に機能を果たし、身体を突如として、怖い程の浮遊感が襲う。
地に足の着かない、慣れない、恐怖を感じる感覚。

それに俺は半ば覚醒し切れていない意識を、強引に目覚めさせる。


「………っ…」


瞳を開く。世界を認識する。
朧げで曖昧な視界に映るのは、白、白、白……。


「……どこだ、此処?」


目に突き刺さる程に、何処までも続く広大な空白の空間。
その何処か虚しくなる虚無の世界に、俺は一人存在していた。

―――何故、自分はこの様な場所にいるのだろうか?

まだ、自身は夢の中にいるのだろうか?

そう、疑問が打って出た。自分の事は自分が一番解ると、そう自負しているつもりだ。

だが、この場所に来る以前の事を思い出そうにも、どうにも思い出す事が出来ない。
記憶を掘り起こそうにも、それを思い出す引っ掛かりがないのだ。

目の前に広がる光景の様に、俺の頭の中にも一部の“空白”が存在していた。


「………ッ!」


無理にでも記憶を引き出そうとすると、頭が拒絶するかの様に鋭い痛みに苛まれる。


「―――お目覚めになりましたか?」

「うわっ!」


思考に没頭していて気付かなかったが。その穏やかな声に現実に引き戻される。
空間に浮遊する俺の頭上。そこに男性なのか、女性なのか解らない、理解出来ない存在が姿を現す。

子供なのか、成人なのか、老人なのかの区別もつかない。
その存在の貌はクルクル…と、様々な貌に変化する。

誰にも似ていなくて、誰にでも似ている。矛盾を孕んだ存在。

―――なるほど、何だ夢か。

そう、漸く理解した。
瞼をゆっくりと閉ざす。夢とは浅い眠りで見るものだと、過去に誰かが言っていた。

なら、もっと深く眠りに就こう。きっと疲れているのだ。
だから、こんな訳の解らない変な夢を見る。


「あわわっ、現実逃避しないでくださいよぉ!」


夢の住人の癖に口煩い奴だ。現実逃避というよりも、夢逃避だろうに。


「そんな細かい事はいいんです、いいから私の話を聞いて下さい!」

「……ハァ、しょうがないな」


俺は閉じていた瞼を開き、再び世界を認識する。
すると世界は色を帯びていて。俺は何時の間にか、その群青色の空間に存在していた。

同じく群青色のテーブルとチェア。
そのチェアの一つに、一人の少女が座っている。


「…それで、君はさっきの?」


[1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ