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義手
第七章

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「僕は叔父さんが好きだし」
「マフィアだったのにか」
「そうだよ、それにね」
 それにだというのだ。
「ずっと僕と一緒にいれくれて優しかったから」
「誰にでもって訳じゃないぜ」
「けれど僕にはそうだったから」
 だからだというのだ。
「ずっと叔父さんに会いたかったしね。お礼も言いたかったんだ」
「だから右手のことはな」
 エドワードは左手でコーヒーカップを持ちながら言う。見れば右手の肘の少し下からが綺麗にない、袖の中は空白だ。
「言うなよ」
「言うよ、この右手のお陰で今も幸せに暮らしていけてるから」
 だからだというのだ。
「言わないでいられないよ」
「気にするなって言ってるだろ」
「そういう訳にはいかないよ、だからね」
 それでだと、ジョージはエドワードにあらためてこう言った。
「有り難うね、ずっと感謝してるよ」
「やれやれだな、俺に有り難うって言うのはな」
 こそばゆい笑みだった、嬉しいのだがそれを素直に受け入れられない笑顔でだ、彼はジョージに対して言った。
「御前と牧師さんだけだよ」
「あの人もなんだ」
「今まで生きてきてな、二人だけだよ」
 本当にこの二人だけだというのだ。
「全くな、もの好きだな」
「そうなんだ」
「そうだよ、俺なんかの何処がいいんだか」
「だからその理由は言ってるじゃない」
 彼がいつも自分に優しく一緒にいてくれたからだ、ジョージはこう言う。
「そういうことだよ」
「そうなんだな、まあ右手はな」
「この手は?」
「これからも使ってくれよ、それでな」
 エドワードの笑顔はさらにこそばゆいものになった、そして目を滲ませて彼に言った。
「駄目だな、えらく苦いコーヒーだな」
「そうだね、苦いね」
「いつもこの店のコーヒーはこんなに苦くないんだけれどな」
 それでもだとだ、滲むものを何とか抑えながら言うのだった。
「今はちょっとな」
「苦いよね」
「全くよ、何で来たんだよ」
 その滲む目で何とか笑いながらの言葉だ。
「本当にな、久し振りだな」
「うん、そうだね」
 ジョージも滲むものを何とか堪えながら応える。
「会えて嬉しいよ」
「だよな、じゃあな」
「それじゃあ?」
「もう一杯飲むか?コーヒー」
 エドワードはジョージにこう提案した。
「ここのコーヒー美味いからな」
「うん、だからだよね」
「ああ、飲むか?」
 もう一杯だ、それをだというのだ。
「あの時みたいな豪勢なフレンチじゃないけれどな」
「いいよ」
 これがジョージの返事だった。
「じゃあもう一杯ね」
「飲もうな、それでな」
「それで?」
「俺はそっちには行けないからな」
 ジョージの方にはというのだ。
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