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木ノ葉の里の大食い少女
第一部
第一章 純粋すぎるのもまた罪。
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「よっ、ヤーバネっ」
「あ、……あんた」

 手を振って見せると、振り返った白い髪の少女は表情を緩めた。色あせた桃色の着物を着ており、髪も整えられている。里の中心部に行くにあたって身だしなみを整えてみたのだろう。もしくはちょっとしたおしゃれだろうか。

「久しぶり」
「あーうん、おひさ」

 ヤバネを連れて木の葉病院へと歩いていく。相変らずつんけんした態度のヤバネは、不意にぽつりと聞いてきた。

「ユヅル、どうなったの」
「まあ、経絡系の損傷がナンタラーカンタラーだね」
「ケイラクケイ? 何、それ。シロートにもわかるように説明して」

 と言われてチャクラの概念や経絡系について大雑把に説明して聞かせたが、ヤバネは「はぁ?」を何度も繰り返した上に、とどめで「あんた、説明下手すぎ。いいよ、あたし他の人に聞くから」と呆れたように溜息をついた。どうしてアタシが呆れられにゃあかんのだ。マナとしては大変理不尽な思いを抱いていたわけだが。

「で、あんたは花の一本も持ってないの? 仲間じゃないの?」
「お前こそ持ってねえのかよ。兄弟だろ?」

 じろじろと無遠慮にマナの空っぽの両腕を眺める。本日紅丸は犬塚家にて忍犬の訓練を受けているので不在だ。ムッとしたので言い返してやると、ヤバネは更にムッとした顔つきになった。

「貧乏ですみませんでしたぁ」

 嫌味ったらしく言われると、火影の援助と狐者異の遺産を受け継ぐ身としては返す言葉はない。そうだ、十三歳の女の子一人で養っていくことしか出来ないいとめ家にはユヅルの医療費を払うくらいで精一杯だったはずだ。聞くところによると、今回の任務での収入は殆どがユヅルとその父ヤジリの医療費に使われ、残ったものは生活費としているのだという。花を買う余裕などないだろう。
 それでも何か言い返したくてうーうー唸っていると、わん、という声がした。

「わっ、苺大福!」

 飛び込んできた青い目の子犬を抱きしめてくるくる回る。

「どうだぁ、訓練は終わったのかーっ?」
「今日もいい子だったぜ、紅丸はよ」

 赤丸を頭に乗っけたキバが近づいてきて、サンキューと紅丸に頬を摺り寄せる。ぽかんとしてこちらを見つめているヤバネに、マナは紅丸をヤバネの目の前に近づけた。

「ほらっ! かわいいだろ〜」
「っう、っわあああ!」

 忍者顔負けのスピードで後退り、お店の壁にべたりと張り付く。更に紅丸を近づけてみると、ヤバネは露骨に嫌そうな顔をして顔を背けた。

「うわ、ち、近づけるな! あっちいけ!」
「……ヤバネ、お前まさか」
「そうだよそうだよ近所の野良犬に追い掛け回されてから犬嫌いだよ犬怖いんだよそれがどうかしたか! 笑いたくば笑うがいいわ、全力であんたを叩きのめすぞ!!」


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