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IFのレギオス そのまたIF
アナザーレコード アルマの手記
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かない。ブラックボックスを理解するには、解体(ばらす)しかない』

 科学者は銅線の流れを指で伝い始めたアルマを楽しげに見た。
 アルマは好奇心が非常に強く、そして物事を柔軟に理解する子供だった。
 知りたいという気持ちが抑えられず、色んなものの仕組みを理解しようとする子供だった。知らないものを知りたい。それだけの、無邪気で純粋な子だった。






『おかえりなさいアルマ。……どうかしたの? 変な顔してるけれど』
『おかあさん、おとこのこに「もうあそばねー」って言われた』
『あら、本当?』
『うん。でもね、前もあって、何日かするとまたわたしたちとあそんで、またなんにちかするといわれるの。あれってなんなの?』
『あらあら』

 不思議そうな顔をするアルマを見て武芸者は不安げな顔を一転、楽しげな表情を浮かべた。子供ながらの照れ恥ずかしの会話が微笑ましかったのだ。

『多分だけどね、その子はあなたたちに興味があるのよ。好きな子でもいるんじゃない』
『へー。そうなんだ』
『随分冷めてるわね。まあそれはともかく、その子はあなたたちに近づきたいのよ』
『あそばないのに?』
『照れ隠しよ。近づいて相手を理解したいけど、距離感がわからない。子供特有の気恥かしやプライドもある。だから、離れちゃうの』
『よくわかんない。む〜』

 わからないこと、というのがアルマは嫌いだった。不機嫌そうな顔をするアルマの頭を撫で、武芸者は優しく言った。

『その子のこと、出来れば嫌ったりしないであげてね。知りたいって思うことはアルマも分かるでしょ。誰かを好きになるって大切なことよ』
『おかあさんはあいがあふれてるって、おとうさんいってたー』
『あぁ……単に好きなものが多いだけよ。そんな大層なものじゃないわ』

 気恥かしげに微笑む武芸者は誰かを嫌えない人だった。どんな相手でも愛せる女性だった。本人に言わせれば正さないと気になるというだけで、その実、特別な誰かとして科学者を選んだ時点で、俗な言い方をすれば愛に優先度をつけられる、慈愛に満ちた普通の女性だった。

『わたしもみんなすきだよ。みんなおもしろいもん』
『そう、良かったわ。その気持ちを大事にしてね』

 アルマが誰かを明確に嫌いだと言ったことはなかった。誰かの認められるところを見つけられる優しい、倣った言い方をするなら誰をも愛せる愛に満ち溢れた、それだけの子だった。





 ある日、アルマは父親に聞いた。何故母親を好きになったのかと。

「理由は……悪い、よく覚えてない。ただ気づいたら好きで、少しでも気にかけてもらおうと、こっちを知って貰おうと頑張ったよ」
「りかいする、じゃないの?」
「勿論それもある。好きな人のことは少しでも理解したい
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