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深き者
第七章
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第七章

「来ましたけれど」
「また随分と変わった村ですね」
「変わっているどころではありません」
 ここで牧師の表情が変わった。暗く不吉なものを感じさせる顔であった。
「この村は」
「変わっているどころではないとは」
「どういうことでしょうか」
「まずこの村は普通の地図には載っていません」
 最初にこう話すのだった。
「そして周囲の村や町からこの村に入る人もいません」
「それはまたどうしてですか?」
「どうして誰も」
「それはこの村があまりにも異様だからです」  
 だからだというのである。
「この村はもう回られましたか」
「まあ車で」
「少しは」
「家はどれも寂れきっていて開く気配もない」
 次にこのことを話した。どの家もまるで中に人がいない廃家の様に酷い外見である。閉じられた扉は開く気配すらないがその朽ちた様は惨いまでであった。
「店も開いたものは一つもなく」
「ですよね」
「本当に一つもなく」
「何もない村です」
 あらためて二人に話した言葉である。
「昼に出歩く人すら稀です」
「ですよね。二人だけ会いましたけれど」
「その人達もつれない態度でした」
「あまりにも余所者に対して排他的で」
 それもあるのであった。
「何もかもを拒む風潮があります」
「それがまた極端みたいですね」
「ここまで排他的な村はそうは」
「しかもです。村の者に御会いされたのですね」
 牧師の顔はさらに暗いものになる。声も無意識のうちか怪訝なものになっている。その声で二人に対して語るのであった。
「二人程」
「ええ、二人だけです」
「今申し上げた通りです」
「では。御覧になられましたね」
 牧師の顔はさらに暗く声が怪訝なものになっていた。
「村の人を」
「ええと。まあ偶然ですけれど」
「体型が」
「そうです。全く同じなのです」
 牧師の声はさらに小さいものになっていた。
「男も女も禿げ上がり顔は前に突き出て目は不気味に大きく」
「ええ、それで」
「唇が厚く口が尖ってますね」
「首筋も何かヒダになっているのです。それに手も何か指と指の間が短く」
「あっ、それは気付きませんでした」
「しかしその姿は」
 役は話を聞いているうちにあることを思い出したのだった。
「まさか」
「んっ!?そういえば」
 ここで本郷も気付いたのだった。
「この姿って」
「君も気付いたな」
「ええ。あれですよ」
 本郷もまた言うのだった。その目を鋭くさせて。
「その姿は」
「あの連中の話は聞いていたが」
 役はここでまた言った。
「まだ生き残っていたのだろうか」
「確信するのはまだ早いでしょうね」
「そうだな。確か古の時代に滅んだ筈だからな」
「ええ、そう聞いていますからね」

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