1年目
春
春A〜「それ」は「彼女」〜
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ると背中には包丁が突き刺さっている。だが、その仕草や口からあふれ出る言葉の数々は、そこらへんにいる女の子と変わりない。いや、むしろ最近の女の子より感情豊かではないだろうか。
ここまでくればどうにでもなれ、と、俺は「それ」に話しかける。
「あ、あの…、佐藤さん、でしたよね……? ど、どうしてこの部屋にいらっしゃるのでしょう……?」
「あぁ、私?25年前にここで殺されたのよ。自縛霊、ってやつ? しかも、まだその犯人捕まってないらしいのよねぇ。物騒な世の中だわ。」
そんなことをいいながらも、「それ」はまだオムライスを頬張っている。
殺された……? 殺人事件じゃないか。
それに、まだ犯人は捕まっていないって……。
サーっと血の気が引き、背筋が凍る。
「それと佐藤さん、なんて他人行儀に呼ばなくていいわよ。さちでいいわ。これから一緒に住むんだし。」
「あ、そ、そうですよね……。ん? 一緒に暮らす……?」
―――え、…えぇぇぇぇぇぇぇ!?!?
「何をそんなに驚いてるのよ。自縛霊、って言ったでしょう?私動きたくてもこの部屋から動けないのよ。」
そうだった。
自縛霊となれば、部屋に憑いてるのと変わらない。
食べ終わって満腹になれば居なくなってくれる。どこかそう期待していた俺は落胆してしまった。
「このことは…、あなたがここにいるってことは大家さんは知ってるんですか…?」
「あー、まぁ知ってるんじゃない……? 幽霊部屋、って言われてこの辺じゃ有名みたいだし。時々近所の子供が肝試しに来たりして困ってるのよねぇ……。“誰かいますかー?”なんて聞いてくるから“はーい”って返事したら怖がって帰っちゃうし。私にどうしろってのよ!」
それは誰でも怖がるだろう、と少し呆れてしまった。
そして、幽霊部屋と噂されるせいで家賃も異様に安かったんだな、と納得する。
だが、幽霊と共同生活など俺は考えたくもなかった。
「ごちそうさま!」
「それ」はどこか満足げな顔でそう言うと、先ほどまで大盛りだったはずのお皿に向けて手を合わせた。
「それにしてもあなた、料理上手ね! こんなおいしいオムライス久々に食べたわ! これからこの料理が食べれると思うと楽しみねぇ!」
それから間を開けず、あ……、と、声を零したかと思うと、「それ」は急に口を噤んだ。そして、前髪で隠れた顔が少し寂しそうになった。……気がする。
「あなたが考えていることはわかる……。“幽霊と同居なんて嫌だ”、でしょ……?」
その言葉にドキッとしてしまう。まるで心を覗かれたようだったからだ。
「今までの人だってそうだった。そりゃね、私は悪霊だし。感情が揺らげばお皿も音を立てるし、宙を舞
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ