暁 〜小説投稿サイト〜
皇太子殿下はご機嫌ななめ
第34話 「税制変更許可」
[1/5]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
 第34話 「華の嵐?」

 ヨアヒム・フォン・フレーゲル男爵は、ブラウンシュヴァイク公爵の甥にあたる。
 ラインハルトよりもいくぶん年上で、すでに士官学校に在籍する士官候補生の一員だ。
 門閥貴族らしく、偏狭であり、傲慢でもあったが、士官学校に入学した頃からそうした部分は影を潜めつつある。
 それというのも理由は単純で、皇太子殿下の士官学校時代の噂を、耳にする機会が多々あったからだ。
 成績、席次そのものはたいした事はなかった。
 上から三十番目。
 しかし戦略にかけては、圧倒的に凄かったらしい。
 人を集め、引っ張り上げ、纏める。
 優秀な生徒に作戦を考えさせて、指揮官を動かす。

「艦隊指揮官というよりも参謀タイプ。もしくは宇宙艦隊司令長官だろうな」

 平民ならば、優秀な参謀になっただろう。
 門閥貴族ならば、間違いなく宇宙艦隊司令長官。
 当時の士官学校の校長や教官の言葉だ。
 あれぐらい人を動かすのが、うまい士官はいない。
 そして今は帝国宰相だ。
 あの皇太子殿下に、これほどふさわしい地位はないだろう。

「勝敗は戦場の外で決まる。そして戦闘は勝ってから行う」

 皇太子の言った事で、それを今でも実践している。

 とてもじゃないが敵わない。
 男爵にとっては偽らざる本音だった。
 素直にそう思えたのは、相手が皇太子だったからだ。
 これが平民。もしくは身分の低い者だったら、嫉妬心が沸き起こっていただろう。
 しかし相手は皇太子だ。
 次期皇帝候補の筆頭。
 いかに門閥貴族であろうと、相手が皇太子ともなれば、負けても嫉妬心が湧き上がってこない。
 身分で言えば、最上級。
 卑しい(フレーゲルから見てだが)者とは違う。
 公爵や侯爵でも勝てない相手だった。
 血統主義の銀河帝国にあっても、血統、地位、実力が一致している稀有な例だ。
 自分が負けても仕方が無い。
 プライドを傷つける事無く、認められた。
 その皇太子が帝国を改革すると宣言したのだ。
 協力するのは当然と思えた。

 ■ブラウンシュヴァイク公爵邸 オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク■

「伯父上。フレーゲル男爵領の税率はどうなっているのですか?」
「前と変わってはおらぬぞ」

 突然なにを言い出すのだ。
 いま帝国は改革の真っ最中である。いたずらに税率を変更するなど、許される事ではない。

「いえ、そういう事ではなく。各貴族領で税制改革が始まり、税金が引き下げられました。しかし未だフレーゲル男爵領では、税金が引き下げられておりません。どうなっているのかと士官学校で話題になりまして」
「それはヨアヒムのところだけでは無いだろう。いまだ成人していない貴族のところは、実行されていないぞ」
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ