暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
遺された悪意
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、オベイロン────須郷伸之はハッ、と吐き捨てるような前置きを置いて口を開いた。

「なぜ?決まっているじゃないか、ティターニア。この僕が君達に会えなくなった時から、本当に何もしていなかったと思っていたのかい?」

「………ッッ!!まさか、監視プログラムを!」

「ご名答。そっちのガキに邪魔されてから、ずっと組んでいたのさ。おかげで僕はクタクタだよ」

いい気味だ、と思いながらアスナは、素早くマイを下がらせながら自らの愛剣の柄に手をかけた。

温かなぬくもりを伝えてくるそれに一瞬だけ心を落ち着け、次いでシャラン、という軽やかなサウンドエフェクトとともに勢いよく抜剣した。

手の中に一部のすきもなく、ぴったりとフィットする懐かしき愛剣の手応え。その切っ先を真っ直ぐ、己の敵に向ける。

男はおや、と首を僅かに傾け、切れ長の相貌に怪訝そうな光を浮かべる。

「……?なぜそんな物がこの空間内にあるんだ?」

その顔に、精一杯の憎しみを込めた視線をぶつけながら、アスナは言葉を紡ぐ。

「答える必要はないわ。それに、あなたはマイちゃんに勝てない」

そう。それがこの空間に硬直をもたらしている物の正体だ。

今、アスナの背後で縮こまっているマイは一度だけ、GM存在である須郷伸之を殺したのだ。システム的に完全に保護されている、そんな存在を、だ。

しかもその方法は、ありとあらゆる方位、方角からの圧倒的武力創造、そしてそれらによる鎮圧。

最終的には首を引きちぎられるという、こちらが勝ったというのに吐き気がするような姿でこの世界から退場していったのだ。しかも、システムに規定されていないBBプログラムでの攻撃だったので、ペインアブゾーバのレベルはゼロ。

現実世界に戻っても、その痛みはしばらく収まることを知らなかっただろう。

同時にその痛みは、消えない痛みとして心の奥底にトラウマとして刻み込まれているはずだ。

心の傷は《心意》の源たる力だが、大きすぎる傷はパフォーマンスの低下しか招かない。つまり、デメリットしか生まないのだ。

正直、須郷伸之という人間は、もう二度とアスナ、少なくともマイの前には姿を現さないと思っていた。それほどまでの断末魔を響かせつつ、彼は消えていった。

それなのに、今こうして姿を現したことから想定できることは唯一つ。

アスナはちらり、とイベントホールのような巨大な部屋の隅から隅まで見回し、最後に自らが背を向けている巨大な水槽を見やった。正確には、その中にぷかぷかと漂っている巨大な眼球を。

こんな大掛かりかつ、何かと重要な雰囲気を纏っている物が、ただの置物という訳であるはずもない。

これがもし、アスナの思っているよりも遥かに重要で、代えの利かない物だったら。

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