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医者の覚悟
第五章

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「しかし多くの命が助かったか」
「それなら嬉しいですね」
「ですが無茶をし過ぎです」
 医師は再び二人を咎める、特に隆則に対して。
「貴方に至ってはです」
「死にそうだったか」
「本当に危なかったですよ」
 身体を酷使するあまりそうだったというのだ。
「ボロボロでしたよ」
「過労か」
「過労なんて生易しいものじゃありません」
 これが医師の言葉だ。
「よく途中で倒れなかったですね」
「気力でもたせていた」
 本当にそれだけでもっていたのだ、あの時の彼は。
「何とかやっていた」
「包帯も薬も水もなくても」
「ああ、何とかな」
 やってきたというのだ。
「俺達より難民の人達の方が大変だったからな」
「どうしてそこまでされたのですか?」
 医師は怪訝な顔で隆則に問うた。
「無茶にも程がありますよ」
「患者の人がいたからな」
「だからですか」
「全部の命は助けられなくても助けられる限りはな」
「助けないとならないからですか」
「だから俺はやった」
「俺もそうなりますね」
 嘉一も医師に言って来た。
「助けられる人がいましたから」
「皆助けたかったしそうなる様にした」
「それが医師の義務ですか」
「そう思っているがな」
「違いますかね」
「それはその通りですがね」
 だがそれでもだとだ、医師は今度は感嘆する顔でこう言った。
「そこまでやり遂げられる人はそうはいませんよ」
「そうか」
「はい、本当に」
 医師はまた隆則に言った。
「立派です」
「当然のことだと思うがな」
「そうですよね」
「そう言えることがです」
 褒められてもそれでも自慢気にはならない、そこに出ているというのだ。
 こう話してだ、そのうえで。
 医師は二人の点滴を替えた。そのうえで部屋を後にした。
 後には二人が残った、嘉一は二人だけに戻ったところで隆則に対してこんなことを言った。
「また何かあればですね」
「ああ、シリアでも何処でもな」
 隆則も応えて言う。
「行こうな」
「はい、そうしましょう」
「俺達は医者だからな」
 人を助ける仕事だし助けられる、だからこそだというのだ。
「行くぞ」
「絶対に」
 まだとても起き上がれないがそれでも話すのだった、二人は倒れても絶対に起き上がるつもりなのだ、人を助ける為に。


医者の覚悟   完


                               2013・7・23
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