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港町の闇
第六章
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第六章

 本郷はその頃下で色々と歩き回っていた。彼は歩きながら敵を探していたのだ。
「ちょ、ちょっと本郷さん」
 その後ろを派手なみなりの男がついてくる。一見すると何処の不良かと思うような格好である。
「そんなに急がないで」
 見れば大森巡査である。この不良のような服もどうやら彼の自前であるようだ。
「別に急いじゃいませんよ」
 本郷はそう言葉を返した。
「いつも俺はこんなのですよ」
「いつもですか」
「ええ」
 彼はやはり素っ気無い態度でそう答えた。
「歩くのは早い方でしてね」
「そうなのですか」
「ええ。それに敵は待ってはくれませんよ」
「そうですね」
 巡査はその言葉にハッとした。彼も警官である。相手が待ちはしないのはよくわかっていた。
「では行きますか」
 彼は顔を引き締めさせてそう本郷に対して入った。
「はい」
 本郷もそれに頷いた。そして二人は歩きはじめた。異形の者を探して。
 彼等だけでなく多くの者がそれを探していた。だがそれは見つからなかった。何人かはそれに対していささか苛立ちを覚えはじめていた。
「ふむ」
 七尾刑事は自身の携帯に送られてくるメールを見て唸った。
「少し困ったことになってきましたよ」
「焦っている人が出て来ているのですね」
「ええ」
 役の言葉に頷いた。
「こうなるとね。何かと厄介です」
「そうですね。けれど大丈夫ですよ」
「何故ですか?」
「出たからです」
 役は表情を変えずそう答えた。
「まさか」
「はい。今本郷君からメールを受け取りました」
 静かな、だが真摯な声でそう答えた。
「出ました。場所は関帝廟の前です」
「そこですか。なら」
 刑事はそれを受けてメールを送った。今中華街にいる全ての警官に対してだ。
 そして警官達がそこに急行する。役も動きはじめた。
「では私達も行きますか」
「はい」
 刑事も動いた。こうして遂に第一幕が開いたのであった。
 三国志演義に出て来ることで有名な関羽は中国においてはとりわけ人気のある武人の一人である。智勇兼備の人物として知られその武勇は最早伝説となっている。それと共に教養と軍略を併せ持っており春秋左氏伝という書を愛読していたことで知られている。当代屈指の将である武勇伝には事欠かない。
 だがそれだけでこれだけ長い間信仰を受けているわけではない。彼は忠誠心溢れる男であり主君である劉備に対して絶対の忠誠を誓っていた。彼等はもう一人の豪傑張飛と共に桃園にて誓いを結び義兄弟となった。その誓いを終生忘れることなく何時までも忠誠と信義を重んじたのであった。
 そのうえ彼は部下や領民をこよなく愛し無欲であった。その為民衆から愛されたのであった。そして神になった。一説には天帝になったとすら言われている。
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