暁 〜小説投稿サイト〜
【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
役者は踊る
第五二幕 「マイナスからゼロへ」
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そのような心配をされることに少しばかりの行き先無い罪悪感が胸を刺した。また、それを知っているような既視感が僕の心を揺さぶる。

――枷を外したことで貴方は”嘗て”に少しだけ近づきました・・・出来るならば、もう全てを忘れさせ、ただ安寧を・・・ですが、もはや災禍は避け得ぬところへと至ってしまった。枷を外さねば、どうしようもない。やはり因果から解き放たれることは能わなかったようです――

慈愛と悲哀、そしてその隙間に滲ませる無力感。あなたは、何故それほど僕にかまうのだろう。
もう記憶が薄れつつある、母親の腕に抱かれた時のようなこの感覚は・・・僕は、この暖かさの主を知っているのか?
だが、覚えがない。記憶の何所と辿っても、声の主と一致する声は存在しない。唯忘れているのか、それとも本当に知らないのか、その判別すらも付かない事に僅かな苛立ちを覚えてしまう。

――もはや望む望まざるに関わらず、因子は他の事象を誘発し、同じ流れへと飲み込まれてしまうでしょう。ですが今回は違う・・・貴方のもとに私がいること・・・それが・・・・・・――

声が遠ざかる。自分の意識も、引力に引かれるように無限光の外へと引き剥がされ、そして――




「あ・・・」

瞳に飛び込むのは白い天井と、泣きそうな顔をしたコトノハ先生の顔だった。

「ベルーナ!!生きているな!?私の顔が分かるか!?」
「・・・おはようございます?」
「・・・ッ!!!このっ、心配をさせやがって!」

きつく身体を抱きしめられる。苦しい、という抗議の声を上げるより先に何故こんな状況になっているかを疑問に思う。確か僕は・・・そう、無理なリハビリを敢行したんだ。床にいるからきっと途中で倒れてしまったんだろう。

・・・今まで倒れることがなかったからこそ何とか続けてきたこのリハビリ。しかし、それもどうやら今日までだ。「途中で倒れるようなことがあればリハビリは全面中止する」という厳しい条件を呑んでおいてこの体たらく。もうこのリハビリの許可が下りることは二度とないかもしれない。

――ちぇっ、結局駄目なものは駄目かぁ・・・

これでリハビリは終わりだ。想像しうる最悪の終わり方だった。
ミノリに何と言って謝ろうか、とか、僕は盾になる資格すらないのかな、とか。いくつかの考えが頭をよぎり、やがて自分が大見得を切った結果があまりにも情けない結末だったことに対する悔しさが奥からこみあげてきた。モニターを見れば既にシノノノが撃破され、ミノリとオリムラが転入生を追い詰めている。

その光景を無感動に眺める。あの場所に自分が二度と立てないと思うと心の奥の激情が抑えきれなくなる。小さな手の平に爪が食い込んで充血する。
だが、次の瞬間僕を抱きかかえていた先生が驚愕と共にベルーナの肩を掴む。
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