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銀河英雄伝説〜生まれ変わりのアレス〜
閑話 アレスとの出会い1
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確かに自分で論戦を挑むだけあって、その口調はもっともらしく聞こえた。
 実際に最初は周囲で黙っていた無関係な人間達も、フォークの言葉に引き込まれている。
 いや、他人事ではなくスーン自身も――その時はさすがだと関心をしたものだ。

 視線がアレスに集まり、彼はただ面倒くさそうに眉をひそめた。

「皇帝の意見が絶対だというのならば、優秀な皇帝に率いられた軍は誰よりも強くなるだろう。実際に共和制が帝国主義に敗れた歴史など幾らでもある」
「そんな太古の話をして何になるマクワイルド候補生」
「共和制を壊した銀河帝国が出来て、ほんの数百年しか経っていないがね。ま、それはともかく、生産性か――確かに現状では一人当たりの生産性ではこちらが有利だろう。だが、人口比では圧倒的に帝国が上だ。例え、優秀でなくとも消耗戦を強いられれば、インフラが崩壊して敗北するのは先に同盟の方だろうね」

 アンドリュー・フォークが劇場のように大きく身振りを振る役者であるならば、アレス・マクワイルドは大学で講義をする学者のようであった。
 淡々とした問題点の列挙に、最初は余裕を持って答えていたフォークも次第に顔を赤らめていく。

「何より共和制と君たちは言うが、帝国の民に共和制を理解しているものがどれだけいる? そんな人間にとっては共和制よりも、その日の食料の方が大事だろうさ」
「そんなことがあるか。君は馬鹿にしているのか。共和制を、そして、貧しくても共和制に命をかけたアーレ・ハイネセンを!」

「もしハイネセンが貴族だったら、ハイネセンも命をかけたりはしなかったと思うが」
「貴様っ!」
 気色ばんだフォークが、立ち上がった。
 既に何人かはアレスの方へと動いている。

 やばい。
 スーンはこの後に起こるであろう事態を想像して、青くなる。
 しかし、その様子に怒りを与えた当の本人は目つきをより悪くした。
 睨んでいる――そうも見える視線で、彼らをゆっくりと見回した。

 心配をよそに、アレスはゆっくりと口元に笑みを浮かべて、呟いた。
「で。いつからその共和制ってのは、他者の意見を許さないようになったんだ? それでよく帝国主義について批判ができる」

「――っ!」
 ――ああ、もう駄目だ。
 スーンは無駄かもしれないが、逃げだそうとして――しかし、それは驚くべき事にフォークの声によって、全ては動きを止めた。

「やめろ」
 と。
 意外な顔は無関係な人間は元より、フォークの取り巻き達の表情にも浮かんでいる。
 その集中する視線の先で、浮かぶ表情は笑みだ。
 おそらくは――蛇が笑えばあんな顔をするのだろう。

 スーンはその爬虫類に似た笑みを見て、背筋を震わせた。
「アレス・マクワイルドだったか」
「なんだ?」
「そ
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