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『曹徳の奮闘記』改訂版
第百三話
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ぶよ愛紗。飛ぶのは愛紗も見ているだろ?」
「それはそうですが……」

 蜀軍は仲軍から大砲一門、それと砲弾が入った弾薬箱六箱を捕獲していた。

「それに仲軍に突破されるなんてごめんなさい御主人様」
「良いよ紫苑、大砲が手に入っただけでも大戦果だよ」

 謝る黄忠に北郷はそう言い、北郷一行はその場を後にした。
 そして後にしてから数分後、爆発音が響いた。

「い、今の音はッ!?」
「敵襲かッ!?」
「報告しますッ!!」

 慌てる北郷達に伝令が駆け込んできた。

「何事だッ!?」
「は、捕獲していた大砲の砲弾が突然爆発しましたッ!! 更に付近の砲弾にも被害が飛び移って誘爆して手の付けられない状況ですッ!!」
「……やられた……そういう事だったのか」

 伝令からの報告に北郷は何かが判った。

「御主人様、一体何が……」
「……王双は初めからあの大砲を置き去りにする気だったんだ。俺達を此処で進撃を停止させるためにね」

 蜀軍内では漸く爆発音が収まったが、被害は大きかった。捕獲した大砲を一目見ようと集まった約五百名の兵士の死傷者を出した。
 この結果、蜀軍内で慎重派が増え出して北郷が予想していた進撃予定日は遅れる事になった。



――建業――

「済まない美羽。数日しか持たなかった」
「仕方ないのじゃ。長門でも負けてしまうのじゃから今回は北郷が一枚上手だったのじゃろう」

 健業に帰ると俺は美羽に玉座で報告していた。

「ま、厄介になってきたのは間違いないだろうのう。荊州方面に向かった劉ソウ殿も豪族の裏切りで戦線が崩壊したようじゃな」

 祭がそう言った。荊州方面の防衛に向かった劉ソウ殿の派遣軍も国境付近の豪族による裏切りの夜襲をかけられてボロボロになって帰還途中だった。

「防衛線を再構築するのじゃ」
「けど、美羽。防衛線を再構築すると言っても何処に再構築するのよ? 既に長沙は取られているし、武昌も蜀軍に占領されているわよ」

 美羽の言葉に雪蓮が反論した。対する美羽は判っていたかのように頷いた。

「防衛線の再構築は時間稼ぎのためじゃよ雪蓮」
「時間稼ぎ?」
「そうじゃ。七乃、地図を」
「はい美羽様」

 七乃が地図を広げた。

「此処建業から撤退して本陣は呉まで後退するのじゃ。そして建業は無防備宣言をして民の不安を和らげる。防衛線は太湖付近とする」
「建業を放棄するのは判るわ。それで美羽、勝てる要素はあるのかしら?」
「勝てる要素じゃと? フフフ、そんな物は最初から無いのじゃ」
「な、何ですってッ!?」

 美羽の言葉に玉座にいた軍師と俺以外の全員が驚いた。

「ど、どういう事よ美羽ッ!! まさか最後の一兵まで戦うというのッ!!」

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