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ハーブ
第四章
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第四章

「好きにはなれませんが清潔にしておかないといけないですからね」
「わかった。では先に入るといい」
「ええ、それじゃあ」
「私は後から入る」
 役はそうするというのだ。
「それではな」
「わかりました」
 こんな話をしてからそれぞれシャワーを浴び眠りに入った。翌朝二人は起きるとまずはホテルを出た。そうしてそのうえでダブリンの古い街並みを歩いていく。
 リフィ川にかかるハーフベニー橋にもたれかかりながらそこでサンドイッチを食べている。その白く緩やかなアーチの橋も青い川も美しい。だが本郷の顔は晴れず面白くなさそうな顔でそのサンドイッチを食べている。
 そうしてだ。それから役に対して言うのだった。
「あのですね」
「どうした?」
「このサンドイッチですけれど」
 今食べているサンドイッチを見ての話である。ダブリンのパン屋で買ったものである。中にはレタスにソーセージ、それにトマトがある。内装は日本のそれとあまり変わらない。
「何かね」
「美味しくないか」
「はっきり言って日本のものと比べるとかなり味が落ちますよね」
 その不機嫌な顔での言葉だ。
「イギリスのものよりましかとは思いますけれど」
「アイルランドも同じだ」
「同じなんですか」
「食べ物にはあまり期待しないことだ」
 こう言うのである。彼もそのサンドイッチを食べているがやはりあまり面白くなさそうな顔をしている。美味いとは思っていないのである。
「この国の食べ物にはだ」
「だからですか」
「それはわかっていたのではないのか?」
「まあそうですけれどね」
 それは彼も同じだった。
「それでもこれは」
「予想以上か」
「はい、予想以上に」 
 まさにそうだというのである。
「まあ食べられればいいとしますか」
「日本料理店に行くか」
「いえ、そこまではいいです」
 それは断るのだった。
「別に。どうせそこもアイルランド人の舌に合うようにですよね」
「ロンドンの日本料理店よりはましな味だと思うが」
「イギリスと比べたら何処でもましですよ」
 とにかくイギリス料理をけなす本郷だった。どうやら過去に忌々しい思い出があるらしい。それでこんなことを言っているようだ。
「あれはもう」
「味付けは塩と酢だけだ」
「鎌倉時代の料理じゃないんですから」
 やはり酷評している。
「何で二百年の黄金時代であんな味なんですかね」
「元々農業が盛んになれない国だからだな」
「それでなんですか」
「イギリスは土地が痩せている」
 しかも寒冷であり気候も悪い。土地の質はチョーク質である。それで美味いものがある筈がないのである。とてもである。
「プティングにオートミールといったものがあるがな」
「あれもアメリカのやつの方がずっと美味い
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