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銀河英雄伝説〜生まれ変わりのアレス〜
決勝戦〜後編〜
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のあがきとばかりに動きだす。
 狭い小さな筺体の中で、ワイドボーンは笑う。

「残念だったな、ヤン。俺は――囮だ」
 その隣を――風が駆け抜けた。

 + + +

 敵の攻撃が弱まり、ヤンはゆっくりと息を吐いた。
 敵の勢いに飲まれ、自然と息も止めていたようだ。
 攻撃は予想通りだったが、敵の勢いまでは予想できなかった。
 最後の一撃がなければ、あるいは中腹まで食い込まれていたかもしれない。
 そうすれば――と、その視界の先で、たった一つ速度を落とさない光があった。

 それはワイドボーン艦隊の中央を、無人の野を進むがごとくに疾走している。
 なぜという疑問は、すぐに溶けた。
 先頭の艦隊がヤンの一撃によって崩壊したために、艦隊の中央にスペースが出来たからだ。そして、艦隊の中央にいるためにこちらからの攻撃は届かない。

 その艦隊の名前を、ヤンは良く知っていた。
「アレス・マクワイルド」
 ワイドボーン艦隊が全てが一つとなって、鋒矢の陣形を作る。
 その中でただ一人後方に位置していたアレス艦隊だけがもう一つの鋒矢の陣形を作り上げていた。他とは出発をわずかに遅らせる事で、他の艦隊からの攻撃を防ぎ――さらには先頭が消失したために空白となった味方艦隊の走る。

 もし、アレス艦隊が十分な兵を持っていれば。
 もし、ヤン艦隊が敵の一部を消滅させるほどの一撃を見舞わなければ。
 もし――ワイドボーンの勢いが僅かでも弱ければ。

 成功する確率は低いだろう。
 艦隊の中を走るという曲芸がそう簡単に成功するわけがない。
 だが、歴史にもしという言葉がないことを、ヤンは誰よりも知っている。
「二撃目だっ!」

 もはやそう叫ぶことしかできず、アレス艦隊の第二の矢が突き刺さった。
 勢いを一切殺さなかったアレス艦隊は、少数ながらにヤン艦隊の中央に食い込んだ。ヤン艦隊はワイドボーン艦隊の勢いを殺すために、艦隊を中央に寄せていたことも災いした。距離があればともかく、文字通り艦隊の中を進むアレス艦隊を止める事ができない。

 それでも突入でわずかに速度を落とす。
 そう意図的に――その様子を、ヤンは苦い顔で見る事しかできなかった。

 + + + 

「スパルタニアンを射出!」
 戦闘艇が射出出来るぎりぎりの速度で、アレスは宇宙母艦三艦を含めて、一斉にスパルタニアンを放った。今までの戦いから、一切温存していた戦闘艇は容赦なく、ヤン艦隊を蹂躙していく。
 敵艦隊を示す赤い点が次々に消えていく。
 その様子に勢いを取り戻したワイドボーン艦隊が第三の矢となる。

 もはやヤン艦隊に立て直す余力はない。
 ヤン艦隊半ばまで食い込んだ矢は、次々と敵を殲滅した。

 後一歩――完全に戦線が崩壊する
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