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占術師速水丈太郎  ローマの少女
第八章
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第八章

「それは保障します。一目で女性でも心奪われるような方です」
「そうなのですか」
「日本に来られたら紹介致しますよ。ただし」
「ただし?」
「心には鍵をかけるように述べておきます。その方は心を盗むのが趣味なので」
「粋な盗賊ですわね」
「盗賊ではなく魔術師なのですよ」
「心を奪う魔術師」
 女であるアンジェレッタから聞いても魅惑的な言葉であった。その言葉に含まれているのは甘い、身も心も溶かして全てを奪っていきそうな毒であった。
「特に貴女は美しい方なので御用心を」
「いいですわね、それを聞いていると日本に行きたくなりましたわ」
 結果としてアンジェレッタの心を誘うものとなった。
「是非共」
「左様ですか」
「ええ。けれど今は」
 だがアンジェレッタはここで述べた。
「はい、残念ですが」
「お話はこれ位にしなければ。お仕事のことで」
「ではお願いします」
 速水は話を聞きはじめた。
「その少女に関して」
「はい」
 アンジェレッタはそれを受けて説明をはじめた。話はようやく一連の奇怪な事件へと移ってきた。
「まずは被害者からお話しましょう」
「被害者からですか」
「そうです。この事件の性質を御存知になられる為に」
 その猫の目の様な目が複雑な光を放ちはじめた。まるで宝石のキャッツ=アイの様に。
「まず被害者の数は今まで十二人」
「多いですね」
「はい、いずれもまあ不審者だったり胡散臭い経歴の持ち主だったり前科者だったりしたわけですが」
「少女に良からぬことをしそうな輩ばかりであったと」
「率直に言えばそうなります」
 それはアンジェレッタも認めた。こうした輩は残念なことにどの国のどの場所にもいるものである。心正しき者がいれば不心得者がいるのもまた人の世なのである。
「被害者はそうした輩ばかりだったのでそれ程被害者への同情はありません」
「そうでしょうか」
 これは容易にわかることであった。
「むしろ同情のしようがないと」
「ええ」
「被害者がどういった者達なのかはわかりました」
 速水はそれを聞いたうえで答えた。
「そしてその遺体の状況は」
「遺体に外傷はありません」
 アンジェレッタは述べる。
「無傷ですか」
「内部も。心臓やそういった場所にも傷や異常は一切ありません」
「そうなのですか」
「ですが。異常はあります」
 その猫の目が光った。光がめまぐるしいまでに変わって見える。それはまさに猫の目であったが猫以上に鋭いものも感じさせるものであった。
「それは一体」
「影がないのです」
「影か!?」
「はい。どの遺体にも影が存在しません。その状態で事切れているのです」
「それはまた面妖な・・・・・・いや」
 だが速水はその話を聞いてあることに気付
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