暁 〜小説投稿サイト〜
弱者の足掻き
三話 「移動と方針」
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自分が自分である証明とはなんなのか
自分でしか出来ないことが出来ることか。名前を初めとする確固たる証を持つことか
“我思うが故に我は有り”
そんなことが正しいのか。自分がそうだと認識し、疑えばそれが正しいのか
だが、自分が認めても、それ以外の全てに否定されたとして、無視されたとして、それは正しいことなのか
何を持って自分を自分だと認められるのだろうか














「どうして、波の国に行くんですか?」
「お前、親戚の奴らがどうなったか知ってるか?」

道中、目的地への道を歩きながら気になっていたことを聞く
商人だと聞いていたが、それなら普通に国内でそれ以外に行くなど面倒だとしか思えないのだが、親戚が何か関係しているのだろうか?

「知らないです。どうなんですか?」
「ほとんど死んだよ」
「え?」

つい聞き返してしまう

「俺の家や親戚は大半が忍でな。俺は才能がロクにねぇからそんなんやらずに少し離れて商売やってたよ。昔は一人違う自分の事を色々と思うこともあったが、今じゃそれが逆にありがてぇ。大抵の奴らは数年前まで続いてた大戦で他国の忍に殺されちまった。やっとそれが終わったかと思えば、今度はお前の親が忍であったせいで死んじまった。生き残った親戚なんざお前さんを除いてロクにいねぇ。もうそんなの御免だ」
「それで、波の国にですか?」
「ああ。もう俺はドンパチなんか御免だよ。死ぬなんざ御免だ。自分の知らねぇとこで親戚がどんどんおっちんでぐの聞いて嫌になっちまったよ。親に従妹に叔父にハトコ……感覚が麻痺しかけた」
「……」
「聞けば、波の国は隠れ里が無いそうじゃねぇか。そうすりゃ忍もいねぇだろ。大名でさえそんな金持ちじゃねぇらしいが、逆に言えば十分に金もってぎゃ楽できそうだってこった。霧隠れなんざ厳しい掟で忍を固めて恐怖政治だなんて言われてる。そんなん嫌だね、俺は静かにすごせりゃそれでいい。そのための金も溜めたよ」
(なるほどね……)

要は安全を求めるための移住。前の世界で行ってみりゃ、先進国の人間が金溜めて物価の違う国で悠々自適に過ごすようなものって言ったところか
ただ、普通はそれはある程度歳喰った後の老後みたいなもんで、安全なんざ求めてじゃないが
それにしても霧隠れの掟が厳しいとかやばい。もしも今持ってる巻物とか色々なことがばれたらアウト過ぎる。この世界観での恐怖政治判定なんてシャレにならんぞ。親父たちが家族以外に開けられんように頑張ってたのはそれか?頑張り過ぎだろ

(ま、今更なんだがな。ばれなきゃ大丈夫だろ)

そうは思いながら、もしばれたらといった想像をして体が少し震えてしまう
そんな自分に気づいたのか、心配そうな顔をしながらイオリがこちらを見る

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