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少年と女神の物語
『狂気に捕らわれた女神:全能なる天空神』編
第一話
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 俺は神代 武双(かみしろ むそう)。家が特殊だったり、名前が可笑しかったり普通ではない自覚はあるが、ここまで異常ではなかったはずだ。
 今も、特殊な事情から海外旅行に来ている。ただそれだけだ。
 そのはずなのに・・・

「人の子よ、早くその女神をこちらに渡せ」

 目の前には、そういってすごむギリシア神話の主神、ゼウスが。

「あの・・・私なんて見捨てて、早く逃げてください」

 後ろには、ゼウスに怯えながらもそういってくる、女神アテが。

 ホント、なんでこんな状況になったのか。
 とりあえず、この旅行が決まったときまでさかのぼって考えてみようと思う。
 確か、あれは夏休みの前日のことだった。



◇◆◇◆◇



「そうだ、武双。明日から私達で海外旅行に行くから」
「はあ!?」

 学校が終わり、帰ってきたら急に姉からそういわれた。
 いや、訳分からん。明日はまだ終業式があるぞ?
 生徒会役員だから、仕事もあるし。

「いやリズ姉。俺まだ終業式が残ってるんだけど」
「もちろん、それが終わって、受け取るものを受け取ってから。だから今日中に準備しといて」

 そうリズ姉は言ってきた。
 こちら、俺の姉の一人。歳は一個上で、俺はリズ姉と呼んでいる。本名は神代リズ。特徴としてふわふわした感じのシルバーブロンドの髪を伸ばしており、瞳の色は緋色。後は胸がでかい。本人曰く、九十二センチだそうだ。
確か北欧のほうのハーフだったと思う。
 思う、というのは俺がそのあたりをよく覚えていないからだ。なぜなら、うちの親とその子供達は誰も(・・)血が繋がっていないからだ。
 あ、俺は純粋な日本人。髪は黒いし、瞳の色は濃い茶色だ。

「まあ、海外旅行といっても、あんまり楽しいものじゃないけどね〜。とりあえず、お帰り!ソウ兄!」
「ああ、ただいま。立夏」

 こちら、俺の妹の一人。歳は一個下で、俺は立夏と呼んでいる。本名は神代立夏。特徴として金髪のツインテールが目立っている。こんな名前なのに、純粋なアメリカ人なのだから、色々おかしい気がする。血筋もあり、胸もあるほうなのだろうが、どうにもリズ姉のせいで目立たない。そう前愚痴っていた

「で、俺達ってのはこの三人か?それとも残りの五人の中からも来るのか?」

 まあ今の台詞からも分かると思うが、兄妹(姉弟)は全部で八人。一男七女という、かなりの肩身の狭さである。もうなれたけどね。
 上に三人、下に四人だ。バランスがいい。
 年齢としては、一番上が高校二年、一番下が小学五年となっている。

「いや、この三人だけだ。その上、全員別行動だ」
「何をしに行くの!?」

 もう既にそれは旅行なのだろうか?
 目的が分からない。


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