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豹頭王異伝
新風
魔戦士の豹変
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 パロ解放軍の最高指導者、アルド・ナリスの所信表明演説が実施された翌日。
 イシュタールに派遣された見習い魔道師が戻り、ゴーラ国内情勢の変化を告げた。

「アムネリスに子供が生まれ、カメロンが名付け親になったのか。
 王子にミアイルと名付けるとは、私に対する当て付けかね?」
「自業自得とは申しませんが、そんな捻くれた見方は御止めになった方が良いですよ。
 ミアイル公子の暗殺を命じたのは誰か、カメロンが知らない事は良く御存知でしょう?」

「流石は大導師アグリッパ様の御気に入り、君の千里眼は総てを御見通しだな。
 私が悪かったよ、白魔道師を代表する人類の旗手ヴァレリウス君」
「いい加減に勘弁して下さい、私は豹頭王様みたいな超人じゃないですよ!
 カメロンからの依頼については、ゴーラ王に知らせてやる義理は無いと思います」

「私としては時機を見計らい、イシュトヴァーンを動かす梃子に使えると踏んでいるのだけど。
 お前は意地悪だね、グインには知らせるが恋敵には内緒かい?」
「どっちが意地悪ですか!
 いえいえ、何でも御座いません。
 早速、仰せの通りに致します。
 ゴーラの騎士は無意識の儘で陣中へ運び、後は勝手に動いて貰いましょう」

「冷たいね、ゴーラの冷酷王イシュトヴァーンも顔負けじゃないか?
 有能な副官が傍に居てくれて、私は果報者だよ」
「あんな無法者《バスタード》と一緒にしないで下さい、私が悪うございました」


 パロ解放軍の指導者アルド・ナリス、豹頭王の接触心話を介した密談が行われた翌日。
 ケイロニア軍と先日に一敗して地に塗れ、復旧の念に燃える新生ゴーラ軍が再び激突。
 世界最強を誇る森と湖の国、ケイロニア屈指の黒竜騎士団と金犬騎士団に突撃。
 怒号する魔戦士の率いる旗本隊、元ユラニア正規軍の将兵を筆頭に雪辱戦を挑む。

 先日とは異なり集団戦闘の鉄則を遵守、各部隊の連係を保ち熟練の機動戦術に対抗。
 圧倒的な実力差を見せ付けられた屈辱的な敗戦を糧に、対策を講じ互角かと見えたが。
 練達の騎士達は豊富な経験値に基く数々の術策を披露、若き勇者達を翻弄。
 ケイロニア軍の経験値は数段も優り、懸命に喰い下がるが実力の差は埋め難い。

 ゴーラ軍は崩壊寸前に追い込まれ、イシュトヴァーンは豹頭王に一騎打ちを挑む。
 グインは鷹揚に挑戦者の意思を汲取り、決死の覚悟と目論見を評価し全面的に乗った。
 豹頭王は一騎打ちで敗れた風雲児の体面を保ち、休戦が成立。
 竜王の施した記憶封鎖《メモリー・プロテクト》、催眠暗示命令は強力無比だが。
 数ザン後に漸く解除《リセット》され、ゴーラ王は封印された記憶を回復。
 ゴーラの僭王へ登り詰めた風雲児、ヴァラキアのイシュトヴァーンが囁いた。


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