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占術師速水丈太郎 五つの港で
第二十七章
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第二十七章

「人間のものとは到底思えませんから。それにです」
「それに?」
「その平尾士長ですが」
 また彼自身への話になる。
「その日は自分の勤務先で当直をしていました」
「当直をですか」
「そこにいたのです。しかし」
「しかし?」
「遺体は海の中にありました」
 ここでもそうした状況になっているのであった。
「殺されてそのうえで海の中に放り込まれたのです」
「殺されてからですか」
「殺されてその瞬間にです」
 まさにそうだと速水に話す。
「一気に海の中にです」
「即死だったのですか」
 速水はその話を聞いてまた一つ事情がわかった。その殺された状況がまただ。
「しかし勤務先で殺されたのはなく」
「連れ出された形跡もありません」
「謎は多いですね」
 速水は海を見ながら話す。
「これはまた。ですが」
 ここで、であった。あることに気付いたのだ。しかしそれは確信ではなかった。
 そうしてであった。ここで出すべきことではなかった。口を一旦つぐんで言うのであった。
「いえ」
「いえ?」
「何でもありません」 
 こう言って言葉を収めるのである。
「特にです」
「そうですか」
「とりあえず殺人に使われた道具も容疑者もわからないのですね」
「はい、全てです」
「わかりました」
 その全てがわからないことがわかったのである。そうしたことがである。
 速水はそれを聞いてだ。また話すのである。
「それでは」
「それでは?」
「まだ午前中ですね」
 コートのポケットからあるものを出してきた。それは懐中時計である。白いそれには金色のチェーンが付いている。その時計で時間を見て話すのである。
「それも早いですね」
「それが何か」
「もう一つ回れますね」
 それを言って微笑む速水だった。
「これは」
「もう一つとは?」
「あっ、こちらの事情です」
 ここでも詳しいことは一切言わないのであった。
「御気になさらずに」
「左様ですか」
「全てわかりました」 
 そしてまた言うのである。
「有り難うございます。事情は全てわかりました」
「犯人解決の手段がわかったのですね」
「はい、わかりました」
 伊藤の問いに対して微笑んで答える。
「事情は全て」
「では後はお任せしていいですね」
「私の勘が正しければ」
 また海を見ている。しかしそこに映っているものはただの海ではなかった。そこにあるあるものを今は見てそのうえで話をしているのである。
 伊藤とはこの後すぐに別れようとした。しかしその前に彼が呼び止めてきたのである。
「待って下さい」
「何か?」
「時間はおありですね」
 こう彼に問うてきたのである。
「確か」
「そうですがそれが何か」
「それでしたらで
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